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春のおままごと 3月16日

先日の竹藪刈り。
怖いなどと言っている一方で、私は枯草に覆われた大地から、淡い緑がそこかしこに姿を見せていたことをちゃっかりと見逃していなかった。普段はぼんやりしているくせに、その辺りは我ながらぬかりない根っからの食いしん坊だ。

ひょこひょこ頭をのぞかせていたのはヨモギの新芽。
幼いやわやわの葉は白い産毛を纏っている。試しに小さな葉をちぎって口に放り込み、噛めばヨモギ特有のあの蒼い香りが「ふぅ」と小さくため息をつくように口の中に広がる。そしてかすかに酸味のような爽やかさを感じたのもつかの間、その味わいを追いかけようとしても、スーッとのどの奥の方へと去っていった。それはまだまだ気づくか気づかないか程度の春の味。ギシギシとした繊維だらけの、ヨモギらしい主張のある香りを楽しむのはもう少し先のことだ。
今はその少し前の、「走り」のようなもの。せっかく芽を出したところを申し訳ないと思いながら、ぷちりぷちりとほんのひと握りほどを摘ませてもらう。摘みながらすでに頭の中では、どう料理をしようかと考えていた。
塩茹でにしたものを細かく刻んで、炊きたてご飯に混ぜようか。オイルづけにしてパスタもどうだろう。それともサラサラの衣をつけて軽めの天ぷらもいいかもしれない。

一見、枯草の他には何もないように見える我が家の土地も、春にはそうやって食卓にのぼる季節の味が生まれている。まだ見当たらないが、フキノトウやツクシ、上手く芽を出せばタラの芽やタケノコだってある。そららをまるでままごとのように、本など見ず思いつくままに調理するのが好きなのだ。
大人になるまで春という季節に、自分がこんなに心躍るだなんて思いもしなかった。

摘んだヨモギの新芽たちは、よく洗って葉先だけ刻んで使い、人参と玉ねぎ、桜エビと一緒にかき揚げにした。桜エビの味が強かったかな。それでもやわらかなヨモギの葉は静かにしっかりと主張して、美味しいかき揚げの出来上がり。カラッと揚がったかき揚げをひと口噛めば、まるで花でも散るように、カリカリ、ハラハラ消えていく。春のほんのわずかな今だけのおままごと。はじまり、はじまり。

3月17日(土)晴れ 最高気温12℃ 最低気温4℃ 
ポカポカ陽気。今日あたりからお彼岸のお墓参りにいらしている方が多いようで、in-kyoの2軒隣の花屋・まるおんさんはあさから大忙しのようす。
お店に飾るための花を購入したら、キティちゃんチョコをもらった。