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東カワウソ 2日目 4月10日

日の出前に目が覚めてしまった。
いつもなら2度寝、3度寝などあたり前なのに、目も頭も冴えて
もう眠れそうになかったので、階下に降りて白湯を飲みながら
朝の美しく雄大な景色に見惚れていた。
刻々と移り行く空の色。その景色は昨日とも明日とも、
1分先ですら同じではないということ。
それは何も北海道だからなのではなく、自分が暮らす環境でも
起きているということを、北の大地で今さらながら気づかされる。

昨夜札幌入りをしていたエフスタイルのお二人が、始発のカムイ
(特急電車)で旭川駅に到着することになっていたので、
夫が運転する車で朝食前に二人を迎えに行った。
仕事やイベント以外で、しかも全く別の土地で二人に会うことは
考えてみたら初めてかもしれない。そもそもエフちゃんたちが
4月に一緒に行きませんか?と声をかけてくれて実現した今回の旅。
なんだか夢の中の出来事のよう。

エフちゃんたちと共に東カワウソへ到着すると、今朝はまたとろけそうな
甘く良い香り。朝食用に萬田くんお手製のシナモンロールを焼く香りが
店内に満ち満ちていた。そこへカプチーノの香りが重なって。
新しい朝の光に包まれる中、なんてことはない会話をしながら
美味しい、美味しいと口々に言う、大好きな人たちの笑顔がそこにあり。
これが幸せでなければ何を幸せと言うのだろう。

お昼のパスタも。

「お昼はパンチェッタを仕込んであるからフキノトウと合わせてパスタにしましょう!フキノトウ摘んできて下さい」と、シェフ。

東川ではフキノトウがちょうど芽吹き時。お店のすぐ目の前で4人が自由にフキノトウを摘み始めた。収穫というとついつい楽しくなってしまってたくさん採ってしまいがちだ。それぞれがなんとなく「さてそろそろ」と、顔を上げてお店に戻り、萬田くんが差し出したボウルへ。春の土で黒く汚した手から集まったゴロゴロと不揃いな大きさの野生のフキノトウはボウル一杯分。量は言われていたわけではなかったのにちょうど良く、それがシェフの手にかかりひとつとして余すことなく調理され、テーブルに並んだ。
「フキノトウとパンチェッタのクリームパスタ」
パスタはリガトーニより太いマニケ。春の苦みとパンチェッタの程よい塩気。そして全体をクリームソースがまとめた一体感のある美味しさに黙ってしまった。これはグルメ云ちゃらとかなんとかでもなければ、大さじ何杯、何グラムといった世界とも遠く離れたところにあるもの。
その場にいたみんなで過不足なく分かち合う喜び、幸せ、季節の恵みや贅沢さに密かに感動していたことは、このときは言葉にできずにいた。
食後のスイーツはバナナチーズケーキとりんごのパウンドケーキを
ハーフサイズずつ。コーヒーは私がハンドドリップで。
ふつふつと感じていたこのときの感覚を、忘れないように
言葉にしておかなければとずっとずっと考えていた。

この日の夜は、再び清水さんと東10号工房の覚さん、ご近所Hさんも
集まっての食事会。これは東カワウソのプレオープン準備の練習?
モニター?という体で。
夜も多幸感。みんな思い思いに飲んで食べて楽しんでいるだけなんだけれど、一皿一皿が美味しいのはもちろんのこと、各人が「東カワウソ」が
始まること、そして萬田くんの前途を心から祝福していたこと。
たぶんそれに尽きるのだろうな。気持ち良く酔いがまわり、昨夜の寝不足もあって、終盤睡魔に襲われスイッチが切れてしまった。
思えば駒形(東京)のカワウソでもそういうことが良くあったな。
久しぶりの感覚だ。

そして明け方、時差ボケのように目が覚めてしまい
その後眠れずにまた早起き。

4月10日晴れ 昨日とは打って変わっていい天気。
きとろんのお風呂は今日からメンテナンスに入るということで、
やはり車で15分ほどで行ける立ち寄り温泉「森のゆホテル花神楽」へ。
露天風呂で、頭上を「くぉー、くぉー」と鳴きながら
白鳥がつがいで飛んで行ったことや、エフちゃんたちと
永井宏さんのこと、「孤独」「カルチベート=耕す」について話したこと。
のんきに気持ち良く解放された場で話した言葉の数々を
こぼれ落ちないように、フキノトウと同じく余すことなく
大事に持ち帰りたいと思った。