伴奏について(その3:別れの曲の弾き方から学んだこと)

学生時代にピアノを習う中で、必ずしもメロディーと伴奏がビッタリ合っていなくても良いと認識させてもらえたレッスンがありました。

「別れの曲」、平成初期の大ヒットドラマ「101回目のプロポーズ」で武田鉄矢演じるしがない男性が浅野温子演じる女性のために一生懸命練習するシーンが印象的でした。

その「別れの曲」はショパンの練習曲(エチュード)の中でもよく知られた曲なのですが、基本的に右手の中指~小指でメロディーを、その他の指と左手で伴奏を弾き、4つの声部に分かれて曲が展開していきます。

レッスンを受けるにあたり、4つの声部をぴったり合わせて練習していきました。もちろんそれは正しい弾き方なのですが、先生からいただいたアドバイスは、
「メロディーと伴奏を必ずしも合わせなくていいんだよ。」
伴奏となる3つの音はなるべく揃っていた方が良いけれど、メロディーはその人によって「ため」があったり緩急がついたり、一定の速さで進んでいくわけではないから、土台となる伴奏と別に歌わせて良い。ということでした。

当時僕はこのアドバイスをすっと受け入れることができず、指示をいただいた通りの演奏にすることにとても苦労したのですが、大人になって実際に声楽や楽器の方とのアンサンブルをする際に、あぁ、こういうことかと納得できたのでした。

ぴったり合っていることも、多少のずれも、音楽的に裏付けがあればどちらも成り立つわけで(正解ではない)、それを選ぶことがその演奏者の個性であり、音楽的な表現なんだなぁと思います。
2日前の投稿で、合わせ方には様々なパターンがあると書いたのはこのことが理由でした。

今日は同じ曲でも捉え方を少し変えるだけで全く違うアプローチに繋がっていくことがある、という話でした。

では、また明日!

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