【劇評202】めでたさも中くらいなり初芝居。歌舞伎座第一部を観て。

 めでたさも中くらいなりおらが春 一茶
 
 コロナ渦が進行し、東京は危機に瀕している。都合があって第二部を先に書き、今、第一部の劇評を書こうとしているが、複雑な思いに捉えられている。
 舞台に立つ役者は、マスクをつけるわけにはいかない。危険を覚悟しながら、舞台に立ち続けるのは至難の業で、尊敬の念を改めて持った。

 さて、『壽浅草柱建(ことほぎてあさくさつどうはしらだて)』は、歌舞伎の正月ならではの曽我物。これまで「浅草新春歌舞伎」で修業を積んできた若手花形が、松也以下勢揃いしての演目となった。

 五郎十郎を松也と隼人。大磯の虎と化粧坂の少将が米吉と莟玉、朝比奈と珍齋が、巳之助と種之助。亀鶴と舞鶴が、鶴松と新悟。祐経が歌昇。
 若さあふれる配役だが、曽我物の荘重さ、様式性を保てるのかと心配になった。現実の舞台は、もちろん十全とはいかないが、それぞれの役者の方向性が見えてくる。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。