丑之助の試練。『盛綱陣屋』の小四郎で芝居心を見せる。
九月歌舞伎座第二部『盛綱陣屋』の小四郎、小三郎は、歌舞伎の子役のなかでも、ずいぶんと芝居のなかでの役割が異なっている。
五月歌舞伎座、菊之助の『春興鏡獅子』で胡蝶を勤めた丑之助、亀三郎が、それぞれ小四郎、小太郎に配役されたと聞いて、なるほど、幼い御曹司たちは、こうして試練を与えられていくのだなと、妙に実感したのを覚えている。
特に小四郎は、これまでも錚々たる名子役たちが勤めてきた大役である。
ところが、現在はコロナウィルスの脅威のただなかにある。
二日初日の予定だったが、第二部に感染者が出たため、稽古も中止になったと聞いた。案の定、初日は延びて六日からとなった。
七日に代役を立てて開演したが、こうした状況は、子役にとっては、苛酷なものだったろうと想像がつく。
急な代演が出来てあたりまえの歌舞伎役者だが、さすがに子役もそうであれというのは無理がある。
特に、盛綱、微妙、篝火らと芝居を作っていく小四郎は、段取りも多く、可愛いからそれでいいという子役ではない。
丑之助の出来が案じられたが、十二日に観た限りでは、悪達者な子役というよりは、端正な様子で舞台にあった。おっとりと育てるのが、音羽屋菊五郎家の方針だが、そのなかで、芝居への意欲が芽生え、強くなっているのがよく分かった。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。