蜆売り三吉、五代目菊五郎の売り声
二月歌舞伎座第三部「鼠小紋東君新形」について、続編を書きます。
この芝居の初演は、安政四年正月興行です。子団次の稲葉幸蔵が、河竹黙阿弥と語らって作った狂言ですが、蜆売りの三吉は、のちに五代目菊五郎となる十三代目羽左衛門。十四歳でしたが、五代目にあわせて当て書きされたとのことです。(上の写真は、五代目の稲葉幸蔵です。この役は、六代目、七代目、菊之助と受け継がれています)
その時代は、十五日の稽古があったというから、しっかりしたものができるはずです。中村仲蔵の弟子、鴻蔵にあずけられた五代目は、深川の蛤河岸にモデルを探しに行きます。初日は、それらしき蜆売りは見当たりませんでしたが、翌日、あきらめずに行ってみると、十二三の小僧がいるではありませんか。頭は月代を剃って三日経ったくらい、汚い五分か四分くらいの丈の小弁慶の着物の上に、浅黄の鯉口を着て、三尺をしめています。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。