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新春歌舞伎の天気図。明日はきっと晴れ。

 年末なので、今年の回顧を書こうかと思ったのだが、例年とは事情が異なる。悲しい気持ちになるのは必定で、こうした人災のような事態を招いた政府への恨み節となるやもしれない。

 そこで気分を変えて、正月の歌舞伎について書いてみる。

 浅草公会堂での花形歌舞伎は、早々に中止が発表された。東京での公演は、歌舞伎座、新橋演舞場、国立劇場の三座となる。

 まず、歌舞伎座から。なんといっても注目は、第二部。吉右衛門の由良之助、雀右衛門のおかるによる七段目。言わずと知れた『仮名手本忠臣蔵』の一力茶屋の場である。討ち入りを構想しつつも、敵の目を紛らわすために、由良之助は祗園で遊びほうけている。そこに密書が届く。
 物語はシリアスなのに、華やかなお茶屋の空気感が濃厚で、気持が晴れる芝居だ。吉右衛門は当代一の由良之助役者。梅玉の兵右衛門とおかるの雀右衛門の顔合わせも大歌舞伎にふさわしい。

 第一部は、猿之助の悪太郎を楽しみにしている。こうしたいたずらっぽい側面がこの役者にはあって、身体のこなしが生きてくる。

 第三部は、高麗屋の三世代が揃っての車引。松王丸に白鸚、梅王丸に幸四郎、桜丸に染五郎。こうした荒事の大物を、祖父、父、孫で出せるのは、一家の反映の証拠で、正月らしいめでたい気分になるだろう。

 演舞場は、なぜか歌舞伎座には久し振りの登場となった海老蔵。
 さまざまな確執も伝えられるが、無事、公演が決まったことを喜びたい。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。