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ものを書く部屋。これが終の棲家となりそうです。

 長年、自分の部屋を持ちたいと思っていました。高校生のころ、この願いがかなって、北向きの四畳半ではありますが、自室を与えられました。大きめの机と、スチールの安い本棚を壁に巡らし、読書をし、ぼんやりと考え、まあ、ほとんどは、紅茶やビールを飲んだりしたわけですが、まあ、冬はきわめて寒く、夏は暑くてうだるようなこの部屋に巣くっていました。

 高校生から東日本大震災までですから、ずいぶん長い間、この部屋の世話になったことになります。最初の劇評集『4秒の革命』(河出書房新社)をまとめたのはこの部屋です。はじめての書き下ろし『傷ついた性』と苦闘したのもこの部屋です。野田さんのノートをまとめた『野田秀樹と夢の遊眠社』をコツコツとまとめたのもこの部屋です。
 狭いし、暗いし、汚いし、おまけに臭いけれど、この部屋で書くしかなかった。それでも、文章は書けるのです。

 東日本大震災で、私の住んでいた新浦安は、甚大な被害にあいまいした。ライフラインが途絶えたので、トランク一つを車に積んで、浦安を逃れました。しばらくは文京区の音羽にあるホテルにいましたが、まあ、いつまでも高い部屋代を払うわけにもいきません。

 たまたま外資の化粧品会社に勤めている友人が、NYの本社に呼び戻され、気前のいいことに、しばらくすんでいいよ、と渋谷区東にあるタワーマンションの部屋を貸してくれました。リビングは、180度オープン、浴室もガラス張り、洗面台とトイレはふたつあり、玄関には靴をいれるウォークインクローゼットがあるような部屋でした。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。