俳優マルチェロ・マーニさんの優しさと哀しみ。
俳優のマルチェロ・マーニさんが亡くなった。深いお付き合いではなかったが、とびきりの笑顔の持ち主だった。もう20年近く前になるけれども、彼が創立にかかわったコンプリシテの作品で修論を書くと決めたので、話を聞かせてやってほしいと楽屋にお願いに行った。そんなときも、急がしいそぶりなど、みじんも見せずに、応接してくださったことが忘れられない。
私が接した舞台は、野田秀樹作・演出がほとんどだけれども、1996年の『赤鬼(RED DEMON)』で「とんび」役を勤めたときの幕切れが忘れられない。妹の死を確かにはわからない「とんび」の哀しさがあふれ、涙が止まらなかった。人間としての優しさが、彼の演技の根底にあったのだろうと思う。どうぞ安らかにお休みください。
ここから先は
172字
すべての有料記事はこのマガジンに投稿します。演劇関係の記事を手軽に読みたい方に、定期購入をおすすめします。
長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺
¥500 / 月
初月無料
歌舞伎や現代演劇を中心とした劇評や、お芝居や本に関する記事は、このマガジンを定期購読していただくとすべてお読みいただけます。月に3から5本…
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。