【劇評155】『風の谷のナウシカ』 昼の部(下) 颯爽たる七之助のクシャナ。
皇女クシャナの登場は、劇的である。
昼の部の(上)に、書いたように、ナウシカとの個性の違いは、拵えから明確になっている。
皇女クシャナ(七之助)の登場は、劇的である。
原作の衣裳にならって、金属製のメタルが輝き、風と自然を味方とするナウシカとは対象的である。ナウシカは族長の娘であるのに対して、クシュ母皇女。その威厳に満ちている。
あえていえば、威厳にはその裏側にプライドがある。自尊心には、高慢も当然、つきまとっている。七之助はこのあたりをひとつの人格として造形するのが巧みな役者である。他の追従を許さない。
ナウシカ実験室の場、空中ガンシップの場、は、『風の谷のナウシカ』の原作、前半の名場面集の趣き。腐海・森の奥の場、同・森の底の場は、ベジテの王子アスベル(右近)との出会い、ナウシカと王蟲との特別な関係が描かれる。
原作では、ナウシカとアスベルの淡い恋が重要に思われるが、舞台ではさらりと描かれている。むしろ、松也、右近の立役としての成長、立廻りのキレが序幕を支えている。
第八場では、クシャナとつかず離れずの主従となるクロトワ(片岡亀蔵)が登場し、観客を沸かせる。
第九場では、ケチャ(米吉)に案内され、土鬼のマニ族の僧正(又五郎)と出合う。幼い王蟲を囮とする土鬼の軍の戦略にナウシカは強く反発する。
序幕から第一幕へ。菊之助のナウシカは、これまで優しい少女に終始していた。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。