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三月大歌舞伎も三部制。歌舞伎座が開いている意味を思う。

 三月の歌舞伎座、番組が発表になった。今年になってからは、三ヶ月続いて三部制を取る。緊急事態宣言の解除の時期が見えない今、終演は、二十時を回らないように組まれているのだろう。
 勘三郎と三津五郎が、納涼歌舞伎を八月に始めたのは平成二年。当時は、昼夜二部制が揺るぎないとされていたから、納涼歌舞伎の三部制は意表を突いた。泉下にいるふたりも、まさか、歌舞伎座が毎月三部制になるとは、思いもよらなかっただろうと思う。
 勘九郎と七之助は、第一部の『猿若江戸の初櫓』にで出る。中村勘三郎家の初代は、猿若を名乗った事跡から取った演目で、からっと明るい江戸の小屋が蘇るのだろう。勘九郎は猿若、七之助は出雲の阿国。
 続いて松緑、愛之助、莟玉の『戻駕』。莟玉は禿たより。どこまで踊り抜くか。
 第二部は、仁左衛門の『熊谷陣屋』、菊五郎の『直侍』と、時代物、世話物の代表的な演目が揃った。ただ、時間の関係で、どのくらいカットさせるのかがどうしても気になる。
 三部は、吉右衛門の五右衛門、幸四郎久吉で『楼門』。役者の大きさで見せる一幕だから、幸四郎の成長ぶりが期待される。
 玉三郎の出し物は、AプロBプロに分かれる。『隅田川』がほとんどで、限られた日に『雪』と『鐘ヶ岬』を見せる。武原はん、最晩年の『雪』が思い出に浮かぶ。いずれも大家か見せる舞踊だが、上演数が少ないだけに、Bプロは奪い合いになること必至だと思う。
 この一月、緊急時代宣言が出てから、家に届く芝居の案内状がめっきり減った。周囲に聞き合わせても、中止や延期を余儀なくされた公演が大いに違いない。そのなかで、このような厳しい環境でも、歌舞伎座が開いている意味は重い。ここで歌舞伎座までも閉じてしまえば、総崩れになるのではないかと案じられる。歌舞伎座での公演継続には、それだけの意味がある。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。