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長谷部浩
2024年7月12日 17:38
『正三角関係』には、何が賭け金となっているのだろう。ずいぶん以前、夢の遊眠社解散のときに、野田秀樹の仕事を概観して、「速度の演劇」と題した長い文章を書いた。今回の舞台は、まさしく役者と演出とスタッフワークの圧倒的な速度を賭け金として、日本の近現代史のとても大切な結節点にフォーカスしている。 舞台写真にあるように、色とりどりのテープ、球、蜘蛛の糸などが、大きな役割を果たしている。年齢を重ね
2024年7月6日 14:44
趣向の芝居である。 七月大歌舞伎夜の部は、『裏表太閤記』(奈河彰輔脚本 藤間勘十郎演出・振付)が出た。昭和五十六年、明治座で初演されてから、久し振りのお目見え。記録によれば、上演時間は、八時間半に及ぶ。私はこの公演を見ていないが、演じる方も、観る方も恐るべき体力が必要だったろう。 二代目猿翁(当時・三代目猿之助)が芯に立つ。猿翁は、スピード、ストーリー、スペクタクルの「3S」によって、復活
2024年7月2日 19:00
鵜山仁演出の『オセロー』(小田島雄志訳)は、滑稽にしか生きられない現代人のありようを写している。 イアーゴの巧みな計略によって、ムーア人のオセローが嫉妬に燃えて、妻デズデモーナを殺害する。この筋は、現代においては、悲劇ではなく、滑稽な惨劇になってしまう。 シェイクスピアのメランコリー劇だからといって、荘重に演出するのではない。SNSのなかで、興味本位にいじられるスキャンダルに、人間の愚かさ