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長谷部浩の俳優論。

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歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
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2022年11月の記事一覧

【劇評284】技藝を追求する團十郎の弁慶。『勧進帳』で幸四郎と猿之助が襲名を盛り上げる。

【劇評284】技藝を追求する團十郎の弁慶。『勧進帳』で幸四郎と猿之助が襲名を盛り上げる。

気力体力が充実したところに、未来を見据えた技藝が宿る。

 さて、『勧進帳』である。
 新・團十郎の弁慶、幸四郎の富樫、猿之助の義経。意外なことにこの顔合わせは、はじめてである。

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【劇評283】唯一の救いとなる夫婦の絆。俳優座『猫、獅子になる』を観た。

【劇評283】唯一の救いとなる夫婦の絆。俳優座『猫、獅子になる』を観た。

 出口のない現実について考えた。

 横山拓也作、眞鍋卓嗣演出『猫、獅子になる』は、八〇代の親が、五〇代の子供の面倒をみる「八○五○問題」に迫っている。所属の俳優に幅のある俳優座ならではの舞台になった。

 老齢になって買い物もままならなくなった蒲田妙子(岩崎加根子)から、次女の岬野明美(安藤みどり)のところに手伝いに来て欲しいと電話がかかる。母妙子は、夫亡き後、自室に閉じこもったまま五〇代にさし

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