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長谷部浩の俳優論。

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歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
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2020年11月の記事一覧

【劇評187】 猿之助の智慧。観客の好みを知り尽くした舞台

【劇評187】 猿之助の智慧。観客の好みを知り尽くした舞台

 歌舞伎座の十一月は例年通り、顔見世の月だけれど、八月からの四部制が続いている。大顔合わせというよりは、大立者から花形まで、それぞれの出し物が並んでいる。

 第一部を飾るのは猿之助の『蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)』。歌舞伎座が開くようになってから猿之助の出演は、三度目になるが、この四つに分割された上演をいかに盛り上げるか、智慧を絞った演目選びに感心する。

 お客が今、何を望んでい

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