#藤田俊太郎
【劇評335】ミージカルの最前線。三浦透子の深く、悲しい演技と歌唱。人間の心の闇を描いて、見逃せない『VIOLET』。
傷痕は、誰のこころにも刻まれている。 藤田俊太郎演出の『VIOLET』(ジニーン。テソーリ音楽 ブライアン・クロウリー脚本・歌詞 ドリス・ベイツ原作 芝田未希翻訳・訳詞)は、二○一九年、ロンドンのオフ・ウェストエンドで初演された。二二年二は日本でも初演されたけれど、コロナ禍のために、ごく短期間の公演にとどまった。 今回、満を持して再演されるにあたって、主役のヴァイオレットは、三浦透子と屋比久知奈のふたりで、ダブルキャストを組んだ。 この作品は、一九六十年代、人種差
【劇評281】花村想太の出世作となった『ジャージー・ボーイズ』チームグリーンのドラマ性。人は大人になり、汚辱にまみれていく。
中川晃教のヴァリーを擁して『ジャジー・ボーイズ』(藤田俊太郎演出 小田島恒志訳)は、再演を重ねてきた。ふたつのチームで公演する場合も、中川だけは不動で、すべての回に出演してきたのである。 私にとって中川のヴァリーは、唯一無二であり、他のキャストなど考えてみたこともなかった。 この十月に日生劇場で上演されている『ジャジー・ボーイズ』は、ふたつのチームがある。中川を中心としたチームブラックと、花村想太がヴァリーを勤めるチームグリーン。私は新しいチームがどれほどのパフォー
藤田俊太郎 師・蜷川幸雄の思い出。その5 俳優の力を真正面から問う。よい演出家の条件は、愛と怒りの強さか。
藤田 蜷川さんの場合、俳優に対する怒るパワーを持ってる愛の強さと同時に、これは素晴らしいことだと思うんですけど、愛と同じくらいの憎悪感というのも持っていたと思います。じゃなければ、いい仕事できないです。そういう蜷川さんがすごいなって思うのは、歓びと同時に反骨精神がある。自分を鼓舞する、マイナスを力に変えていくものすごい欲望がありましたね。もしかしたらその断られたってことすらも、力に変えていく才能をもっていた気がします。 長谷部 この間木場勝己さんに話を聞いたんだけど、蜷川さ
藤田俊太郎 師・蜷川幸雄の思い出。その3 ゴールドシアターのプロンプとして学んだこと。稽古場で自分の居場所を見つける。
長谷部 稽古場の蜷川さんについて、僕は「グリークス」のときは毎日見てたから、そのくらいまではよくわかってるんだけど、やっぱり、ずっと批評家がいるわけにもいかないから、あんまり行かなくなって、そこから現場で起こっていることは、よくわからなくなっちゃったんだ。2000年周辺と、それ以降を比べると、もっと忙しくなったよね。作品数が増えたでしょう。 藤田 たまたまだと思うんですけど、蜷川さんはそれも頭にあったと思いますね。「このままじゃ助手の人数が少ないな」って。たくさんいたんです