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尾上菊之助の春秋 その壱 春

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尾上菊之助さんの話題が中心のマガジンです。筆者の長谷部浩は、『菊之助の礼儀』(新潮社)を以前、書き下ろしました。だれもが認める実力者が取り組む歌舞伎、その真髄について書いていきま…
有料記事をランダムに投稿します。過去の講演など、未公開の原稿を含んでいます。アーカイヴが充実すると…
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#坂東三津五郎

三津五郎の墓参りに行って、ぼんやり考えたこと。

三津五郎の墓参りに行って、ぼんやり考えたこと。

 入試の季節は、受験生の必死な思いとぶつかりあうことになる。
 もっとも、二○一五年の二月二十一日からは、この慌ただしい日々に、新たな感慨が加わった。この日、十代目坂東三津五郎が、五十九歳の若さで亡くなった。このときの衝撃は、私にとって大きな意味を持つ。

 先立つ三年前、三津五郎は盟友だった十八代目中村勘三郎を一二年十二月五日に亡くしている。このときの嘆きは、築地本願寺の本葬で、三津五郎が読んだ

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役者人生に微妙で、重大な影響を与える「代役」。玉三郎、三津五郎、海老蔵、菊之助について。

役者人生に微妙で、重大な影響を与える「代役」。玉三郎、三津五郎、海老蔵、菊之助について。

 代役という言葉にひかれる。
 歌舞伎の世界に留まらず、代役によってチャンスを得た人は多いに違いない。
 私が一九九九年から五年ほど、日本経済新聞で現代演劇の批評を書く機会を与えられたのも、代役だったと聞く。
 予定していた筆者に不都合があって、亡くなった文化部編集委員の川本雄三さんが推薦して下さった。川本さんとは芸術祭の審査委員でご一緒していたときに毎日のように劇場でお目にかかった。その決め手に

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玉三郎の代役を菊之助が勤める。歌舞伎役者のたしなみについて考えた。

玉三郎の代役を菊之助が勤める。歌舞伎役者のたしなみについて考えた。

 歌舞伎役者の誇りは、急な代役が勤められるところにある。
 レパートリーシアターならではのプライドだが、めったに出ない演目、しかも一座に過去に勤めたことのある役者がいない場合は、いったい、だれから教えを受け、突発的な代役となるのか、昔から、疑問に思ってきた。

 今回、十二月の歌舞伎座第四部『日本振袖始』もまた、かなり例外的な代役となるのだろう。
 岩永姫を勤めるはずだった玉三郎が新型コロナウイル

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菊之助の『義経千本桜』について思うこと。

菊之助の『義経千本桜』について思うこと。

 映像だけで批評を書いたことはない。これまで長い間、評論家としての活動を続けてきた。舞台を記録した映像は、研究のために活用してきたが、生の舞台を観ずに、映像だけで批評を書いたことはない。

 今回の国立劇場による放映は、カットがあり、私としては不満足なかたちだった。けれども菊之助さんから、「観てください」とわざわざリンクhttps://www.youtube.com/watch?v=az2wWl4

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ドイツ、ベルリン・ケルンでのレクチャーの予定をお知らせします。

ドイツ、ベルリン・ケルンでのレクチャーの予定をお知らせします。

ヨーロッパでは刻々と情勢が動いています。

現在のところ、4月30日には、ベルリンの日独文化センターで講演を予定しています。

また、6月の26日にはケルンの日本文化会館でもレクチャーの企画を進めています。

実現するかどうかは、予断を許さないところです。

こうした危機が訪れる前は、中村勘三郎と坂東三津五郎を中心に、「歌舞伎の新しい波」について語ろうかと思っていました。

けれども、考えを切り替

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