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尾上菊之助の春秋 その壱 春

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尾上菊之助さんの話題が中心のマガジンです。筆者の長谷部浩は、『菊之助の礼儀』(新潮社)を以前、書き下ろしました。だれもが認める実力者が取り組む歌舞伎、その真髄について書いていきま…
有料記事をランダムに投稿します。過去の講演など、未公開の原稿を含んでいます。アーカイヴが充実すると…
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#中村勘三郎

三津五郎の墓参りに行って、ぼんやり考えたこと。

三津五郎の墓参りに行って、ぼんやり考えたこと。

 入試の季節は、受験生の必死な思いとぶつかりあうことになる。
 もっとも、二○一五年の二月二十一日からは、この慌ただしい日々に、新たな感慨が加わった。この日、十代目坂東三津五郎が、五十九歳の若さで亡くなった。このときの衝撃は、私にとって大きな意味を持つ。

 先立つ三年前、三津五郎は盟友だった十八代目中村勘三郎を一二年十二月五日に亡くしている。このときの嘆きは、築地本願寺の本葬で、三津五郎が読んだ

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平成中村座の菊之助

平成中村座の菊之助

 平成二十二年の十二月、尾上菊之助は、中村勘三郎のすすめによって、平成中村座の公演に参加している。その経緯については、『菊之助の礼儀』(新潮社 2014年)に詳しく書いた。

 公演が実現するにあたっては、同じ年の三月十八日に、打ち合わせを行っている。このとき提案した演目については、『菊之助の礼儀』にすでに書いたが、演目を並べただけではなく、いささかの説明を加えた文書があったのを思い出した。
 コ

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菊之助の『義経千本桜』について思うこと。

菊之助の『義経千本桜』について思うこと。

 映像だけで批評を書いたことはない。これまで長い間、評論家としての活動を続けてきた。舞台を記録した映像は、研究のために活用してきたが、生の舞台を観ずに、映像だけで批評を書いたことはない。

 今回の国立劇場による放映は、カットがあり、私としては不満足なかたちだった。けれども菊之助さんから、「観てください」とわざわざリンクhttps://www.youtube.com/watch?v=az2wWl4

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ドイツ、ベルリン・ケルンでのレクチャーの予定をお知らせします。

ドイツ、ベルリン・ケルンでのレクチャーの予定をお知らせします。

ヨーロッパでは刻々と情勢が動いています。

現在のところ、4月30日には、ベルリンの日独文化センターで講演を予定しています。

また、6月の26日にはケルンの日本文化会館でもレクチャーの企画を進めています。

実現するかどうかは、予断を許さないところです。

こうした危機が訪れる前は、中村勘三郎と坂東三津五郎を中心に、「歌舞伎の新しい波」について語ろうかと思っていました。

けれども、考えを切り替

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幻の企画デヴィッド・ルヴォー演出「曽根崎心中」。勘三郎と菊之助は、攻めた。

幻の企画デヴィッド・ルヴォー演出「曽根崎心中」。勘三郎と菊之助は、攻めた。

『天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎』(2016年文春新書)には、幻の章があります。紙幅の関係で、初校ゲラが出た時点で、やむなく掲載を諦めました。
あまりにも残念で、悔いが残るので、ふたつの章を、蘇らせることにしました。以下に掲載するのは、新書版で言うと、『195ページの「八月納涼歌舞伎」二十周年』の前におかれるはずだった文章です。二十五、曽根崎心中
                      

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