プロの議事録はここが違う。一目置かれる議事録作りの8つのメソッド
議事録は、書く側にも読む側にも「なんか面倒くさいな」と思われがちです。しかし、議事録をないがしろにするのは、情報流通を疎かにすることと同じ。
議事録の質を高めることは、仕事の評価を高めるだけでなく、ビジネスを加速させる力となります。
このnoteでは、「残念な議事録を少なくする」をテーマに、「文章を書くのが苦手」「情報の論理構造の整理が苦手」という方にも、実践可能な方法を書いていこうと思います。
新人の仕事といえば…議事録
今回、アドビさんの「みんなの資料作成」という企画に参加し、「新社会人向けに社内資料のノウハウ」をお伝えすることになりました。
新人が任せられる資料の代表例といえば…議事録ではないでしょうか。
多くの会議に必須な議事録ですが、面倒な仕事でもあります。現場では、新人メンバーが議事録をまかせられる傾向があります。
ただ、新社会人の方は、会議や議論に慣れていないだけでなく、情報整理・文章作成に慣れていないことから、議事録を正確に作成することが難しい場合があります。
僕は、最初の会社で「経営企画室」という部署にいたことがあります。その頃、全社会議や支社会議のファシリテーションを務めながら、議事録も担当していました。
数時間以上におよび、重要な決定事項・検討事項が多い会議です。さらに、議事録は全社員に「会社の方針」として共有されるものだったので、入社当時はかなりプレッシャーを感じていました。
そうした経験をもとに、まずは「議事録とは何なのか?」を整理して紹介していきます。
議事録、お前は何者なのか?
議事録とは、会議の進行や結果を正確に記録するためのテキスト文書です。
主に、「後で読み返す記録」「検討・決定事項のエビデンス」「参加しなかった方への情報共有」などで使われます。
現場では、「会議の内容を記録する」というボヤっとした説明だけで、オンボーディングもなくまかせられ、前任者の議事録を参考に、議事録を作るというケースが多いようです。
議事録という仕事は、あまり評判が良くない仕事です。
作るのが手間、面倒
手間の割に読まれているかわからない
作っている意味を感じない
プレッシャーがかかる
また、読む側からすると、こんな声が多いのも現実です。
あがってくるのが遅い
読みにくい、内容が分かりにくい
読まない、使わない
メンバーの時間を無駄に食っている
慣習として議事録を作っているだけで、「やりたくないが、ルールだから新人にやらせている」というケースが少なくありません。
残念な議事録の9つの特徴
「言ったことを発言者ごとにまとめるだけでしょ?」と思われがちですが、残念な議事録と良質な議事録には、これほどの差があります。
残念な議事録の9つの特徴
読みにくい(一言一句、口語体まで頑張って書いている)
無駄に長い、冗長(文字起こしと混同している)
共有が遅い
出席者や読んだ人に、不要な不快感を与える
主語が不明確、あるいは、ミスリードをもたらす内容になっている
必要な情報が不足している
会議で出なかった情報が、背景なく追加されている
情報が不正確、改変されている
会議であがったドキュメントや必要な資料へのリンクや添付資料がない
良質な議事録の特徴
読みやすい(箇条書きや記号などを適切に使用)
分かりやすい(情報が構造的に整理されている)
簡潔(必要な情報だけを明確に記載している)
共有が早い(翌日など会議の内容を覚えているタイミング)
出席者・発言者の心理的安全性が担保され、尊重されている
5W1Hが明確(誰が、いつ、なにを言って、なにが決まり、なにが検討事項で、なにがネクストアクションとなっているか)
読み手に発見や方向性を示している
会議で話し合われた情報だけが、適切な背景情報とともに記載されている
必要なドキュメントやソースが正確に記載されている
残念な議事録は、会議や議論の意義を失わせ、後の情報収集を難しくします。誤解を生んだり、トラブルを引き起こす原因にもなります。
議事録と書き起こし(文字起こし)の違い
残念な議事録ができる最初の原因は、「議事録」と「書き起こし(文字起こし)」の混同です。
どちらも「議事を記録する」点では同じですが、目的や内容が異なります。
議事録:会議やミーティングの進行や結果を記録するための文書。重要な決定事項や行動計画などの情報をまとめるもの
書き起こし:会議での発言やリアクションを、正確に漏れなくテキストに起こすことで、コンテクストごとアーカイブするもの
「議事録やっといて」だけの指示で、頑張って書き起こしをしてしまう人は少なくありません。
しかし、書き起こしは、冗長でデータ量の多いものです。書き手にも、読み手にも、不要な負担を強います。まずは、必要とされている議事録が、どんな趣旨の記録なのかを確認しておきましょう。
「分かりやすく」しかし「意味や情報を変えない」ことは、案外難しい
議事録では、読みやすさ・分かりやすさは大事です。しかし「改変」までしてしまうのは、NGです。
「分かりやすさ」と「意味や情報を変えないこと」は、案外難しいもの。そのヒントが、少し前にネットで話題になった記事「人の話が処理出来ない奴へのアドバイス」にありました。
まさに、議事録の作り方のポイントは「情報量を圧縮する」です。そして、やってはいけないことは、「解釈すること」です。
解釈することのリスクは、2つあります。
1つ目は、単純に難易度が高いこと。リアルタイムでメモをとりながら、解釈を加えていくのはかなり難しく、記録の抜け漏れが起きやすくなります。
2つ目は、意味が改変されること。解釈することで、自分にとって分かりやすい意味に変わってしまうことがあります。
議事録は、出席者以外にも共有される可能性がありますし、エビデンスとして利用されることもあります。もし、議事録作成時に、不明な固有名詞や論旨不明、聞き取れなかった点があれば、解釈せずに後で(なるべく早いタイミングに)確認することをおすすめします。
では、どうしたら、「情報が圧縮された、良質な議事録」を作れるのか。簡単なテクニックを8つほど紹介していきます。
良質な議事録を作るための8つのテクニック
発言を一言一句、書き起こさなくてもいい
「発言者・固有名詞・数字・提案」を抜け漏れなく
なるべく早く出す
短く端的に。「てにをは」を分かりやすく
あらかじめ議事の流れやアジェンダを把握していく
不明点・疑問点があれば残しておく
出席者・発言者の心理的安全性を担保し尊重する
独り歩きしても通用する内容に
1. 発言を一言一句、書き起こさなくてもいい
はじめて議事録を書く方にありがちなのは、「頑張って一言一句、書き起こそうとすること」です(それが求められるケースもありますが)。
実際の会議では、冗長な発言が多いですし、無関係なコメント、あいづちなども起こります。それを一言一句書き起こすと、こんな議事録になります。
この書き起こしから、余分な表現を削ると、こうしたスッキリな議事録に変わります。
ポイントは、「記録するプロセス」と「書くプロセス」とを分けること。
会議中にいきなり完成された議事テキストを書こうとするのは危険です。会議中は、文章になっていない議事録用のメモに専念し、会議後にメモをもとに情報を圧縮したり、文章化していくのをおすすめします。
2. 「発言者・固有名詞・数字・提案」を抜け漏れなく
議事録において、「文章力」はそこまで重要ではありません。それよりも必要なのは、「発言者・固有名詞・数字・提案」の4つの要素です。
まずは、この4つを聞き逃さないようにしましょう。この4要素を並べ、箇条書きで整理するだけでも、十分に役に立つ議事録になります。
3. なるべく早く出す
時間をかけすぎると、出席者が会議の内容を忘れてしまいます。正しい内容だったか分からなくなりますし、議事録の意味が薄れてしまいます。一方、早く出せば出すほど、参加者からのフィードバックを得られやすくなります。
早く議事録を出すポイントとしては、「会議前に集められる情報は、事前に集めておく」ことがあります。議事録のフォーマットや共有する際のルートを事前に決めておくのも有効です。
4. 短く端的に。「てにをは」を分かりやすく
議事録には、特別な文章表現力は不要です。なるべく文章を短く、端的に「構造化された情報」に変えるのがポイントです。実際の発言は冗長なことがありますが、「情報」だけを抜き出して圧縮しましょう。
表現として、記号や箇条書きなどを多用するのも有効です。
発言を、ただの文章ではなく「構造化された情報」として再構築するのは、最初はテクニックが必要ですが、慣れると、普通に文章を書くよりも、スピードが上がり、見る側も「字ばかりで読むのが辛いし、分かりにくい…」ということがなくなります。
まったくお手上げな方は、こちらの『入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法』という本がおすすめです。
5. あらかじめ議事の流れやアジェンダを把握して会議に臨む
私は議事録を取る際に、アジェンダに沿って、先に枠だけを作っておき、そこに議事の内容を埋めていくスタイルを取ります。
理想は、アジェンダも資料も事前に共有してもらうこと。話が頭に入り、メモが取りやすくなるだけでなく、議事録公開のスピードも早まります。
6. 不明点・疑問点があれば残しておく
会議で聞き漏らしてしまったり、議事録に起こす過程で、「この部分、わからない・これ、おかしくない?」という不明点や疑問点が出てくることは、実際少なくありません。
そんな時は、見ないふりをしたり、誤魔化したりせずに、「ここが不明」というマークをつけておきましょう。議事録を共有する際に補足してもらったり、次回の会議に回せるとベストです。
7. 出席者・発言者の心理的安全性を担保し尊重する
「声で発する言葉」と「文字にしたときの言葉」とでは、異なる印象を読み手に与えることがあります。また、会議の流れ上、出席者が感情的な発言をしてしまうことも少なくありません。
会社や組織ごとの議事録のスタンスにもよりますが、議事録では「出席者・発言者の心理的安全性が担保され、尊重されている必要がある」と考えています。
会議に出なかった人が議事録を見て不快になったり、発言者本人が「あの日の言葉がすべて記録に残っている…」と感じてしまうと、活発な議論を阻害してしまう場合があります。
もちろん、議題の本論にかかわる部分を、曲げてしまうのはよくありませんが、発言者・読み手が不快に思うような言葉があった場合、表現を変えたり、記述を避けるようにしましょう。
もし、残すべき表現や情報で判断しかねることがあれば、出席していた上司や別の方に事前に「この部分について残すべきか」と確認してみてもいいでしょう。
8. 独り歩きしても通用する内容に
議事録は、独り歩きする資料でもあり、出席者以外の目に触れることがあります。
できるだけ、出席者でなくても内容が理解できるように、前後や背景情報を入れたり、資料をたどっていけるようにソースや関連資料へのリンクや添付を入れるなど、「独り歩きしても通用する内容」にしておきましょう。
タイムスタンプや記録者、出席者などの情報を残しておくのも重要です。
上級者向けの4つの議事録テクニック
ここまで紹介したのは、基本のポイントになります。これらの基本をおさえられた方に、上級者向けのテクニックを4つ紹介します。
1. リアルタイム議事録メモをライブ共有する
Googleドキュメントなどで議事録メモを作成し、それを画面共有などでライブ共有するやり方です。
参加者が「今、なにを話しているか」を把握しやすくなりますし、少し前の会話を振り返りやすくなります。決議事項や検討事項、ディスカッションなどの会議では、特に有効です。抜け漏れや誤りの指摘をしてもらいやすくもなります。
ただし、タイピングスピードや即興的表現力が必要とされます。
2. 議事開始時にアジェンダを共有する
会議開始時に、アジェンダを共有します。そのタイミングで、「ほかにアジェンダがないか」や「特に優先度の高いアジェンダはどれか?」などを確認しておくのもおすすめです。
知らない話題・業界の議事録を作るのは、なかなか大変です。事前に、会議の構成を知っておくことで、議事録のアウトプットをシミュレーションしたり、アジェンダの内容を予習してくことができます。
ただし、ファシリテーターと役割が重なりますので、事前の役割分担が必要です。
3. 議事終了時に会議の「振り返り」を実施する
議事の最後に、議事録を振り返りながら、各議題の決まったことや持ち越したことなどを振り返ります。「決まったこと」「忘れて欲しくないこと」「ネクストアクション(持ち帰りや次回の宿題になったもの)」などを中心に振り返りましょう。ダラダラと長くならないように、スパッとやりましょう。
ネクストアクションは、期日・担当者を握り合い、議事録に残しておけると会議の生産性がグッと高まります。このタイミングで、会議中では抜けていた情報が見つかることも多いですね。
これも、ファシリテーターと役割が重なりますので、事前の役割分担が必要です。
4. 議事録をストックする場所やファイル名ルールを決めておく
議事録そのもののテクニックではないですが、検索性・アーカイブ性を意識しておきましょう。「あの議事録どこだっけ?」「いつの回だっけ?」「どのファイルが議事録だっけ?」となると、だんだんと議事録そのものの価値が下がっていってしまいます。
議事録を共有する際には、今回の議事録と過去のバックナンバーをみられる場所もあわせて共有していくとアーカイブ性が高まり、議事録そのものの価値が高くなります。
最後に、議事録の共有に役立つ「Adobe Acrobat オンラインツール」の紹介
最後の注意点です。議事録は、社外秘のやりとりや情報が多くなります。議事録や議事録の添付資料を扱う際には、「セキュリティ」に気を使う必要があります。
議事録を共有するためにPDFへの変換やPDFの圧縮をしたい場合には、Adobe Acrobatのようなセキュリティが担保されたサービスを使いたいところです。
また、議事録は独り歩きする資料でもあるので、「第三者からの閲覧リスク」や「持ち出されるリスク」も、なるべく最小限にしたいところです。
PDFの作成・編集の代表的なツール「Adobe Acrobat」の情報保護に関する強みは、パスワード保護とセキュリティが担保された編集機能にあります。
「デジタル署名」機能を使えば、書類の改ざんがしにくくなり、文章の信頼性の問題もクリアできます。
アドビは、無料で使えるオンラインツールも多く提供しています。
最後に、その中から議事録作成で使いそうな「Acrobat オンラインツール」の機能をいくつか紹介します。
「嫌な仕事」「面倒な仕事」と敬遠されがちな議事録、今回紹介したテクニックやツールを駆使して、うまく職場でのプレゼンスを発揮してみてください。
いつもサポートありがとうございます!サウナの後のフルーツ牛乳代か、プロテイン代にします。「まあ頑張れよ」という気持ちで奢ってもらえたら嬉しいです。感謝。