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シン・アサヒスーパードライは推せる? 新旧飲み比べのリアル

皆さま、おつかれさまです。
後継経営者のお悩み解消に【徹底伴走】するコンサルタントの長谷川です。

アサヒスーパードライがリニューアルしました。
リニューアルと言っても「缶のデザインが変わった」や「一部原料が変更となった」といった話ではありません。味や缶のデザインはもちろん、訴求ポイントやそれを伝えるCMに至るまでブランドのすべてを変えるという思い切ったチャレンジ。1987年の発売以来、36年目にして初めてのフルリニューアルらしいです。

私にとって、アサヒスーパードライは大人の象徴なのです。
父親が仕事から帰ってきて、TVの阪神戦とセットでいつも食卓にはアサヒスーパードライの大びんがありました。それをグラスに注ぎながら「なんや、今のプレーは!」とエラーした選手を叱責すれば「よし!」と手を叩きながらホームランを打った選手を称える。そのような監督気分の父親の姿を日常的に見ていたので、いつの間にか自分は阪神ファンになり、そして20歳になれば選ぶお酒はアサヒスーパードライとなった。キリンやサッポロのビールも嗜むが、私はやっぱりアサヒ派です。

そんな馴染みの味が変わるということは一大事です。飲食に関して味にうるさいタイプではないが、当たり前にあったものが失われるかもしれない、という危機感に近いと思います。興味や関心ではなく不安から、今回のリニューアルに対して注目していました。

それを知っていた妻が、市場に新アサヒスーパードライが並び出した頃に「今日行ったスーパーで前のアサヒスーパードライが残ってたから」と旧アサヒスーパードライを買ってきてくれました。それであれば、リニューアルされたものを買ってきて、新旧飲み比べをしようじゃないか! と夫婦で盛り上がり、ある晩に自分で作ったたこ焼きを肴に飲み比べ大会を行いました。

まずは旧アサヒスーパードライから。一口飲み、「あぁ、これこれ」
この口に広がる苦味とのどごし。まさに辛口。飲み進めると、これぞビールという味わいを感じる。
次に新アサヒスーパードライを飲んでみる。一口飲むと「ん?」と思い、続けて飲んでみる。アサヒスーパードライの辛口は飲み初めに感じたが、スッキリとした味わいでのどごしはさわやか、旧と比べると少し物足りなさを感じました。

一緒に飲み比べをしている妻にも感想を求めると「新しい方はさっぱりしているけど、これだと他のビールとの違いが良く分からないよね」とのこと。これに対しては、私も同感でした。アサヒスーパードライと言えば、CMでも特徴的なキャッチとして言われていた「辛口」です。この辛口を新アサヒスーパードライの方では正直弱く感じました。パッケージにある「辛口カーブ」の通り、飲んだ瞬間に感じるものの、旧アサヒスーパードライにあったような飲みごたえほどには感じなかった。新旧の飲み比べをしたからこそ、より感じたのかもしれないです。

ブランドのフルリニューアルについては非常に難しいことは、身をもって知っています。
私は、前職が化粧品会社で商品の研究開発をしており、ブランディングにも携わっていたことがあるからです。ブランド名はそのままにコンセプトを変更する場合には、特に細心の注意を払っていました。それは、固定客の支持を守りつつも、新規客の獲得も目指さなければいけないからです。
固定客がブランドを愛用してくださる理由はさまざまです。ブランドの世界観やデザインの面もあるし、使用感や効果効能という面もあります。そのようなことを踏まえた上で、リニューアルを実行するにあたっては、どの面を残してどの面を変えるかということを慎重に検討しなければなりません。全くの別物になることなく、ブランドのアイデンティティを継承していくことが求められるのです。

私の経験ではあるが、化粧水のフルリニューアルにあたりパッケージの瓶のデザインから使用感、香りに至るまで変更することがありました。変更しなかったところは、ブランドのコンセプトと訴求成分くらいです。実際に販売されると売上は悪くはなかったが、予想していたほどには伸びませんでした。
また、妻はその化粧水を愛用していたのだが、リニューアル後の商品は次第に使わなくなってしまった。その理由を尋ねるとただ一点、「香りが受け入れられなかったから」。固定客がブランドを愛用してくださる理由はさまざまであるが、離脱する理由もさまざまです。改めて、ブランドのリニューアルは難しいと思い知りました。

今回のアサヒスーパードライのフルリニューアルについて、数字的なものを見ると順調と言えます。2月中旬から新アサヒスーパードライが市場に出ている缶容器の3月の販売数量は、前年比141%。また、購入者数は2021年末の1,961万人から2022年3月は2,036万人になったという。初動だけ見ると、今回のフルリニューアルは上手くいっていると思います。
しかし、フルリニューアルの成否はここから、継続購入をしてもらえるかがポイントです。新旧飲み比べをした現時点では、私は新アサヒスーパードライに対して「辛口」が物足りなく正直馴染めていない。しかし、ブランドが発信する「多様なライフスタイルに合わせる」というコンセプトから、飲み慣れてくると新しい「辛口」も馴染んでくるかもしれない。
そうであれば、あの時の父親のように、野球観戦とビール。大人の象徴と思うセットで、次は試してみようと思います。

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