私の秘密の扉

日常、同じオフィスで繰り返される仕事、
業務、人間関係、ちょっとしたストレス。
それでも収入を得て、自分の城で自由に暮らす。
そんな毎日に充実感はあれど、慣れてくると物足りなさや、このままで良いのかと言うモヤモヤした気持ちになる。

そんな時、訪れる場所がある。

私の秘密の扉だ。

その扉を押すときは、何だかいつもドキドキするのだ。初めての場所に飛び込むみたいに。

その扉は町の中心部の路地に入っていった先にある、お酒と紅茶のお店だ。

昼間はティールームになり、夕方日が暮れると照明が落され、バータイムになるとてもオシャレな空間だ。

地下に降りていく階段、そしてホテルのロビーの雰囲気を感じさせる品の良い分厚いガラス扉。入り口にも暗色の照明が照らされ、これから素敵な時間が始まる雰囲気だ。

ここに初めてきたのは、職場の飲み会の帰り。

時間があったので、ずっと前から気になっていたのを、ふと思い出し向かった。

雰囲気のある扉に、気後れして
入ろうかやめようか、しばらく迷った。

お店の周りをぐるっと一周して、
意を決して入ってみた。

『カランカラン。。。』
美しく軽やかに響く鈴の音と共に店内に入ると、
バーテンダーらしき制服を着た男性の店員さんが二人こちらを振り返り、

『いらっしゃいませ』
と笑顔で軽やかな声で迎えてくれた。

そのうちの1人はメガネをかけた一見インテリ風な、笑顔がどこか人懐こい30代後半くらいの男性。

後で分かったのだが、オーナーだ。
もう1人はアルバイトらしき若い男性。

店内は、高級ホテルのロビーの様な雰囲気で、テーブルや椅子も見るからに質が良いのが分かる。

照明も落としてあり、とても良い静かで落ち着く雰囲気だ。

そして、なんと言っても目につくのが、
カウンター越しにある全面ガラス張りの壁だ。

ガラスの向こう側に見えるのは、
石の塀なんだけど品よく蔦が張ってあり、
更に照明で照らしてあり、
とても美しいのだ。
巨大な自然の絵画のようだ。

鼈甲色の光沢あるカウンターテーブルに、
ソファの様な革張りの座りやすい椅子。

目の前でバーテンダーが作業していて、
絶妙な高さで手元が見えるか見えないか。

見えても、流しやその他の道具が
美しく見えるのだ。

そんな、カウンターに座って
目の前のバーテンダー越しに美しい
絵画の様なガラス越しの風景を見てると

本当に特別な秘密の空間に来たようで、
ワクワクしつつも、自分が特別な存在に思えてきて気分がとても高揚した。

まさに非日常の空間。

日常があるから、非日常が特別に感じる。

そんな日常に戻って行く地下からの階段を登る足取りは格段に軽く、そして心も明らかに軽くなっていた。

私の秘密の扉は、
日常と非日常を繋ぎ、自分の心をニュートラルに戻してくれる大事な存在なのだ。

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