『20−1(ナインティーン)』感想
―終わりがあるから美しいのかもしれない―
こんにちは。
満開の桜よりも、散りゆく桜に心惹かれる春谷です。
永遠なんて存在しない。やがて終わってしまう、だからこそ恋の炎も燃え上がれば、芸術へのほとばしる情熱も生まれるのではないでしょうか……と昭和歌謡のような世界観を語っていますが、まさにこの世は諸行無常。
たとえば、近い未来に隕石が衝突して地球が滅びるかもしれない。
◆地球滅亡が目前に迫った夏休み、四人の少年少女の物語を描いた小説
『20−1(ナインティーン)』
著者:木村竜史 様
文学フリマ大阪11(2023年開催)で購入した本です。
会場で、
『大人になれずに死んでいく―』
と掲げられたポスターというかのぼりのようなもの(もしかしたら本の帯を見たのかもしれない。すみません、記憶が曖昧…ですがとにかくそのキャッチフレーズ)に吸い寄せられてブースに立ち寄りました。10代の少年少女の物語って好きなんです、せつないイメージがあって。
興味津々でながめていると、ブースにいらっしゃった方(おそらく作者さんご自身)が、販売されている本について丁寧に説明してくださいました。
他の作品も気になりつつ、『20−1(ナインティーン)』を購入。
文フリから帰宅して高揚した気分のまま、調子に乗って購入した本を並べた写真をTwitter(X)にアップすると、
〈楽しんでくださいね〉と作者さんが自らリプをくださいました。
お優しい……!
というわけで、さっそく拝読いたしました。
『20−1(ナインティーン)』感想
隕石衝突により地球が滅亡すると報じられた全世界。地球を救うために少年少女が立ち上がる―
……わけでもなく。
終焉に向かって人生を見つめ直す少年少女の心の内が、克明に描かれているのがリアルでした。
それぞれ違った家庭環境、性格の少年少女が四人登場します。
地球滅亡カウントダウンを、その複数の人物の視点から描き分けているのですが、それぞれに共感しながら読み進めました。
家庭環境に恵まれている子もそうでない子も、哲学的な問いに頭を悩ませる子もそうでない子も、皆、等しく最後を迎える。そのせつなさ、はかなさ、美しさが最も際立つラストにグッときます。
……ネタバレなしで感想を述べようとすると、私の語彙力では簡素な説明しかできないのですが、
この小説のラストを電車で読んでいた時、おもわず泣きそうになって涙をこらえました。
という体験は述べておきます。
鳥肌が立ちました。
そして、なんといってもタイトルのセンス!
「大人になれない」=「20-1」でナインティーン。
いやー、好きなんですよこういう遊び心。
好きなのに自分では思いつけないんです(羨)
文章もテンポ良く進んでいくので読みやすく、「最後」までじゅうぶん楽しませていただきました。
こちらの作品はネット上でも公開してくださっていますが、
個人的には紙の本で購入できて良かったです。
電子よりも紙が好きということもありますが、
装丁がかっこ良いのです。
文庫本サイズだから市販のブックカバーにおさめて持ち歩けるのも嬉しい。
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