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本の選択問題

これこそが一番難しい問題ではないでしょうか。日本では今でも年間7万点以上の出版物が刊行されていて、それを全部フォローするのは到底無理。100万冊以上の蔵書を並べる超巨大書店ならば可能かもしれませんが、はるやに置ける新刊本は多くて1000冊程度でしょう。コーヒー豆や茶葉以上に「厳選」しなければなりません。

 

では、なにを基準に仕入れるのか。先行する小さい本屋さんのなかには、<旅>をテーマに揃えたり、絵本や写真集をメインに書棚を整える店も見受けられてますが、沈思黙考をいくら続けても「そのなにか」は浮かびません。取次の関係で、そもそも小型書店には大出版社刊行のベストセラーは入りにくいという事情があるので小さな出版社の書籍が多くなるのはいたし方ありません。とは言っても、まだまだ余りあるほどの出版物があります。

 

ネットを駆使して流行りものを敏感に察知して仕入れるのが王道でしょうか。でも、駆使するのはまあまあ苦手だし、とくに敏感でもないし。第一、そうしたマーケットの把握が上手なのはAmazonに違いなくて、小規模書店の役割というか残された存在意義は「独自性」しかないのではないでしょうか。

 

というわけで、わたしたちが読んで面白かった本と読んだら面白そうな本を仕入れることに落ち着きました。独自性は、初めに設定することもできるけれど、結果として現れることだってあるでしょう。

 

余談ですが、雑誌ライターをやっていて気づいたのは、いくらマーケットリサーチしても楽しい雑誌はできやしないこと。一時期、広告代理店主導で読者層の設定からその読者層の興味の対象などを分析して誌面づくりを考えるのが常識でしたが、それは景気のよかった大雑把な時代だったからこそ通用した手法でしょう。世間のニーズに耳をじっと傾けて、その最大公約数を見つけて誌面を作っても中身は薄くなるばかりです。小さい書店は、とことん個性的であっていいのではないでしょうか。

 

旅の本屋『のまど』<http://www.nomad-books.co.jp/

 妙蓮寺で見つけた個性が光る小さな書店『生活綴方』
<https://www.tsudurikata.life/>

 

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