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バベル九朔 考察

暗い展開とか理解できなかった、難しい。

という感想をよく耳にします。

私なりの考察ですが、あれは小九朔の夢と現実に対する思考と葛藤の中。

バベル→実現不可能と思われる夢

カラス→不吉と思われがちですが、実は幸運の象徴。実はポジティブな存在。吉報。

九朔は負けそうになっていたんですね、色んなことに。生活防衛資金も尽きそうで、そろそろ夢=小説を諦めようか、母親や周りにもとやかく言われそろそろ潮時かと。そう思っていたわけなんですね。

ただ、ここで諦めるのか?と。他人の色あせた夢などを想い葛藤しているわけなんですよ。自分もバベル(夢)を諦める?夢から脱出するべきか?と。30歳手前という年齢からしてもかなり悩んでいたんじゃないかと思います。

自分でもわかっているんですよ。もう駄目なんじゃないか。そんな中でもがいた事、悩み苦しんだこと。多かれ少なかれ誰しもありますよね?

カラス女は夢から逃げるな、と追い回す。夢から逃げ回るもがき苦しむ九朔。

このまま現実逃避して本気の絵空事とするのか、夢をかなえるためにもがく(扉を探す)のか、バベル(夢)を清算して現実のみに生きるのか。

バベルの中で葛藤した末、現実逃避をすることは真っ先に辞めた九朔。

そして清算するための扉を開けるかこのまま夢を現実にするための扉を探すかの二択になったわけですよ。

初めはこのまま夢を諦めようをと長編小説をばらまきそちらの扉を開けようと試みたのですが、やっぱり無理だった。少し膨らんだ(開きかけた)とカラス女は言ったが、やはり九朔にとって未練や色々思うことがあったんでしょうね。ここまでやってきた、夢中になれる、本当に好きなことを諦めたくなかった。。。 カラス女も「もしかしてデビューが近かったのかもしれないわね」などと述べる。それはもう諦めきれない、あからさまな未練の言葉ではないかと思う。

だから「僕はここに残る」と口にした。これからも夢を追い求めると。色々と葛藤したが、決心したのである。もう諦めないと。

最後ミッキーという大きなネズミが死にますが、それは大きな悩み。問題が片付いたということでもあります。

幸運の象徴であるカラスも扉でも探そうかな、と言ったわけです。

全く暗い話では無く、明るく前向きな終焉なのである。

まぁ、ただ心を決めたことでこれからもっと全身全霊をかけて必死にその夢だけに向かって生きていくことになるので、バベルから出れない。傍から見ればもっと大変になるよ。って事だと思います。

わかる人にはわかる話かと思う。私は万城目さんの作品で一番好きな作品である。

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