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親友への手紙〜夏の雨のひと〜

今日は、親友の命日だ。あの日も、今日みたいな気持ちのいい秋晴れだった。

彼女は、21年前の今日、自ら命を絶った。

その日、私は大学に行く日で、何となく選んだ服装はなぜか全身黒だった。玄関で母に、「あんた、今日は全身黒なんて珍しいわね。」と言われたのを今でも覚えている。

「あんた、今どこにいる?すぐ帰ってきなさい。」授業が終わって友達と遊んでいた私に母からの電話。

真っ白な頭で急いで駆けつけると、彼女はすでに棺桶の中に静かにおさまっていた。もう、この世には存在しない、本当に静かな、ただ体だけがそこにあるといった状態。

数人の親戚の方がいる前で、私は彼女のお母さんに抱きついて、わんわん泣いた。驚きと、ショックと、もう二度と会えない悲しみと、自分にもっと何かできたんじゃないかと自分を責める気持ちがごちゃ混ぜになって、声を出して泣いた。


幼稚園の頃からの親友だった。ゾウさん公園での待ち合わせがお決まりで、自転車で色んなところに冒険した。鬼ごっこで、よだれがでるくらいの大興奮と爆笑で、毎日一緒にいた。一人っ子の彼女の家は、大きなピアノがあって、ピアノが上手で、指が細くて綺麗な子だった。毎回ちゃんとおやつが出てきて、母があまり家にいなかったわたしは羨ましかった。

中学にあがると、繊細な彼女は、友人関係に悩み学校に来られなくなった。わたしは剣道部に入り忙しくて、あまり会えなかった。どう接していいかわからなくなってしまっていた。


1年遅れで高校に入って、少しづつ会えるようになった。でも、繊細な彼女は高校を卒業することは出来なかった。それでも、やりたいことを見つけて料理学校へ入学。カリキュラムはハードだったが、メイクも上手くなって、わたしより一足早く彼氏もできた彼女はキラキラしていた。青春を楽しんでいた。羨ましいくらい。


そのあと、色々あった。色々。。。彼女とたくさん話しをしたと思う。良くなったり、誰とも会えなくなったり。一進一退。自分と向き合っていたんだと思う。

その苦しみ、もどかしさは彼女にしかわからない。出口のないトンネルを歩いているみたいだったかな。話したくても声がでない感覚だったかな。わたしには想像することしかできなかった。


占いを勉強し始めてから、彼女の命式を調べてみた。

癸巳 みずのとみ 夏の雨だ。優しく、夏の暑さを和らげてくれる夏の雨。彼女にぴったりだった。慈愛の人、思いやりがあって、努力家。自分より人を気にかける。そのままだった。

印綬があるから、頭が良かった。テストの点数はいつも私より良くて、苦手な数学や理科を教えてくれた。

胎と死があるから、感受性が強くて、たぶん、色々なものが見えていたのかな。六年生のとき、よく2人で見えない世界の話をした。そこを『不思議な世界』って2人で呼んでいた。


今、もし、彼女が生きていたら、2人でどんな話をしていたかな。きっとあなたは結婚して、子供は2人くらいいて。恋愛が苦手なわたしの恋の悩みを、笑いながら聞いてくれたかな。

あなたの、深い黒い瞳を思い出すよ。けたけた笑う、笑い上戸なところも思い出すよ。


お彼岸、あの世とこの世が繋がる期間。あなたが思い出す人は誰ですか。

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