スマートスピーカーが日本でいまいち普及していない本当の理由
日本では、2017年10月にGoogle Homeが発売し、2017年11月にはAmazon Echoが発売され、それ以降大きなメディアでの露出もあり、注目されてきた。TVCMでもこれらのスマートスピーカーを目にした人は多いのではないか。
当初は、スマートスピーカーはスマートフォンの次のスマートデバイスの目玉として、爆発的な普及が期待された。一方で、発売から約2.5年がたって日本でのスマートスピーカーは普及率で5.9%(2019年2月時点。おそらく今は8%近くまでは伸びている)と普及率が26.2%(2019年1月時点)の北米のような爆発的な普及には至ってない。
では、なぜ、スマートスピーカーは日本での普及に苦戦しているのか?
要因1. WOW体験を作る手頃な連携機器の認知不足
僕は仕事で、日常的にGoogleやAmazonだけじゃなくて、スマートホーム界隈の人と話をしているが、スマートホームの昨今の課題認識はかなり足並みが揃ってきたと感じている。
その背景にAmazonやGoogleの成功パターンの整理が進んだこともあるし、この2〜3年で各社試行錯誤した結果、業界全体での認識が揃ってきたということもあるかもしれない。
今のスマートホームは、スマートスピーカー先行で認知や普及が進み、その連携機器がその普及についてこれていない状況だ。ある程度の認知が取れているのは、大手家電製品の新商品くらいで、それには家電の買い替えという大きなコストを伴う。
でも、実はスマートホームを手頃に体感することができるのは、安価に手に入るスマートスピーカーと後付けできる手頃なIoT製品の組み合わせだ。
具体的には、スマートリモコン、スマートスイッチ、スマートカーテン開閉器のような後付けできる手頃な製品だ。これらは、どれもスマートスピーカーと合わせて買ってもセール時であれば、1万円を下回る価格でセットで導入可能だ。少し値ははるが、スマートロックも後付けできる製品として人気だ。しかし、Google HomeやAmazon Echoという製品だと6割を超えている認知が、これらの手頃なIoT製品では現時点で高いもので精々1割程度だ。
スマートリモコンは、うちで作っているNature Remoのように赤外線リモコンの代替品で、赤外線リモコン付きの家電ならほとんどなんでもスマホやスマートスピーカーから操作できる。単体で使っても、スマホで家の外からエアコンをつけれるようなメリットはある。
スマートスイッチは、どんな電源スイッチでも物理的に押せるデバイスで、お風呂の遠隔操作や照明に使っている人が多い。
スマートカーテン開閉器というのは、カーテンレールの中を自由に動くデバイスで普通のカーテンの開け閉めを自動化出来る。
最後のスマートロックというのは、内側から開け閉めするための鍵自体を覆うように設置して、スマホで操作することで鍵の解錠・施錠をデバイスがやってくれるものだ。また、スマートプラグというデバイスもあるが、プラグは結構ユースケースが限定されがちだ。
これらの製品はスマートスピーカー単体では体験できないような物理デバイスを声で動かすことを可能にするので、利用者の満足度は高い。実際に、Nature Remoのスマートスピーカーと連携しての使用は8割程度で顧客満足度は約95%だ。
要因2. ”なんか設定が難しそう”のハードル
スマートスピーカーやスマートホームのような家電製品となると、設定が難しそうと尻込みする人が驚くほど多い。
しかし、僕は身近な自称IT音痴の人たちがあっさり設定を終わらせるのを何度も目の前で見ている。スマートスピーカーの設定というのは、スマートスピーカーのWiFiをインターネットに繋ぐところがいちばん重要で、それ以外の設定はどちらかと言えばやること次第で付加的なものだ。
他の上記1で紹介したような家電も普通にやれば設定は数分で完了する。購入したあとに、設定が簡単で驚いたという声もよく聞く。
さらに、この設定のハードルを超えると、かなり定着率は高い。うちのNature Remoの利用率は、7割を超えているし、家族で利用している人も約半分もいる(概算値)。
一方で、これらのスマートホーム製品の設定でつまづくとすればだいたいネットワーク周りの設定だ。WiFi周りの設定は必要にはなるが、それはパソコンを使うことでも同じなので、そのハードルを超えられる人は少なくないと思うが、問題が起きた時に解決出来る人は限られるのは事実だろう。
こういったユーザーへのサポートサービスが充実されれば、より安心してスマートホーム製品を導入することは可能になるが、いかに安価にサポートサービスが提供できるかが課題になるだろう。
WiFi設定につまづくのは少数でほとんどの人が実際にやってみて設定の簡易さに驚いているのが実態だ。
要因3. マーケティングで煽った過剰な期待
スマートスピーカーのユースケースの中で、定着率がいちばん高いと言われるのは家電の操作だ。僕自身、この5年間、家電の操作はほとんど声で済ませてるし、一度やり出すとリモコンを探すことが面倒に感じるようになる。人間というのは本当に怠惰な生き物だ。
それもあって、最初のスマートスピーカーのプロモーションにおいて、家電操作は大々的に打ち出されてきた。
しかし、実際にスマートスピーカーを買った方が気づいたのは、スマートスピーカーだけでは、家電の操作ができないという事実だ。未来感漂う声での家電操作を期待して買った人の絶望感は想像に難しくない。
もちろん、それを分かってスマートスピーカーを買った人やそれでもスマートスピーカーを使い続けている人が一定数はいるだろう。
だが、過度に期待を煽ったことで、ユーザーのスマートスピーカーで出来ることが少ない、何もできないという認識に火をつけたのは間違いないだろう。
よく言われている間違った普及阻害要因
スマートスピーカーの普及の足かせになっているのは、日本人がスピーカーに話しかけるのが苦手という話をする人がいるが、それは甚だ勘違いだと思う。
僕自身、実際にAmazon Echoが普及する前にEchoを買って、たくさんのアメリカ人の友人に見せびらかしていた。結果、ほとんどのアメリカ人が最初はスピーカーに話しかけることに戸惑っていた。
新しいジャンルの製品が生まれた時に、その適応に戸惑うのは当然で、それは国民性の議論と混同すべきではない。
次に、よく聞く課題としては、日本語認識を含めた会話能力の問題だ。ここに関しては、日本語の認識と会話能力の2つの要素がある。日本語の認識については、特にGoogle Homeでは精度が高いし、Amazon Echoでも簡単な会話であれば問題ない。
スマートスピーカーに流暢な会話の能力までを求められると現時点ではかなり厳しいと言わざるを得ないが、そこまでの会話能力がなくても、単純な動作だけでスマートスピーカーを使うメリットは大きい。
最後に
まだまだ課題の多いスマートホームではあるが、確実に世の中を便利にするデバイスとして、徐々に認知が広がり、最近では伊集院光さんのようなタレントから勝間勝代さんのようなキャリアウーマンにまで幅広く浸透してきている。
一昔前まで日本が先行していたスマートホームの世界でも、日本が世界においてきぼりにされないようにスマートホーム市場をこれからしっかり盛り上げて行きたい。
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