ポップ音楽は究極のコンシューマービジネス
最近、これからNature Remoの販売をいかに伸ばしていくかということで、マーケティングについて考えることが多い。
Nature Remoもようやく累計販売台数が10万台を突破し、商品の認知も10%を超えた。今年に入ってからTBSの「グッとラック」 でもイチオシ商品として取り上げもらい、じわじわとではあるが、一般層にも商品が広がりつつある。
マーケティングについて思考を巡らす中で、人気ミュージシャンがいかに優れたマーケターであるかということに気がづいた。音楽は、聞かない人なんてほとんど聞いたことがないし、ポップ音楽は究極のコンシューマービジネスだ。
そこから、音楽をクリエイターの立場で語り合う「関ジャム 完全燃SHOW」を見るようになり、色々な気づきがあったのでまとめたい。関ジャムは、今ではいちばんのお気に入りのTV番組だ。
Case 1 : 多重カメラワークを駆使するユーミン
今でも50代、60代の間で絶大な人気を誇るユーミンこと松任谷由実。オリジナルアルバム38作/400曲以上を作り、CD売上はソロアーティスト初で3,000万枚を突破。
ユーミンの「Hello, my firend」が米津玄師のLemmonの曲にも影響していることを本人が認めていることからも世代を超えた彼女の音楽の魅力が伺える。
ユーミンの曲では、歌詞の中に映画のような多重カメラワークが実現されている。この多重カメラワークを駆使することで、1つの曲でいろんな視点を取り入れて、たくさんの人が自分ごと化できるように工夫されている。
その一例が、「ダイヤモンドダストが消えぬ間に」という曲だ。
この曲の1番の歌詞では、真夏のクリリスマスで南半球で彼と楽しくクリスマスを過ごす姿が描写されている。一方で、2番の歌詞は、真冬で一人で過ごすクリスマスの描写。これによって、独り身の人も、カップルもユーミンの曲を聞いて、自分を重ねることが出来る。
このような多重カメラワークは、マーケティングで言えば、ペルソナ毎にマーケティングのアプローチを変えることと同じだ。
ただし、ユーミンはそれだけではない。自分の楽曲を作るのに、デニーズで話を聞いてそのネタをもとに歌詞を書くこともあるらしい。
これは、まさにマーケティングでいうところの顧客調査と同じだ。
Case 2 : アンケートをベースに詩を書く西野カナ
西野カナの代表曲と言えば、「トリセツ」ではないか。
「トリセツ」は、"彼へのメッセージを 取り扱い説明書風に歌う曲"という企画書をベースに、西野カナさんのお友達やスタッフなど周囲の方へアンケートを実施。そこで、「取り扱い説明書」に入れたいことを書いてもらったそう。
企画書を作っている時点で、他のミュージシャンと違う視点でプロデュースされていたことが伺える。西野カナさんは、ソニーミュージック所属の歌手なので、そもそも企画書を作らせるという企画も裏にはあったのかもしれない。
ただ、この西野さんのとった、アンケートを友達に取って、それを参考にしながら、歌詞の内容を検討するのは、まさにマーケティングで重要な顧客インタビューと同じだ。
製品の販売において、特にコンシューマー向けの商品だと自分自身も潜在顧客なので、自分の感覚に頼ってしまいがちだ。しかし、実際に顧客に会いに行って話を聞いてみると、自分では気づかない視点を顧客がいかにたくさん持っているかということに気づかされる。
あの伝説のヒット曲は、そういった忠実な顧客視点があったからこそ、あそこまでの人気を得たのかもしれない。
Case 3 : 世代を超えてヒット作を出し続ける椎名林檎
椎名林檎は、僕の世代でも超人気アーティストで女性の人気も根強い。
最近、周りの20代の世代と話をしていても、好きなアーティストを聞くと、女性を中心に椎名林檎の名前があがることが多くて驚いた。
椎名林檎は、独特な世界観を追求しているし、その強い女性像が特に女性層に受けているのはあると思う。また、先日の関ジャムでも放送内容が自分の意図しているものと違う説明になっていたということで、訂正するための出演もあったほどこだわりが強い。
最近の彼女の活動で特に目立つのが他のミュージシャンとのコラボ。例えば、以下のようなコラボをこれまで実現している。
・浪漫と算盤(w/宇多田ヒカル)
・目抜き通り(w/トータス松本)
・獣ゆく細道(w/宮本浩次)
・駆け落ち者(w/櫻井敦司)
コラボは、マーケティングでもよくやる拡大戦略。お互いのファンにリーチできるので新しい層に自分の曲を聞いてもらったり、存在を認知してもらうことが出来る。
Case 4 : おやじ心を鷲掴みするあいみょん
若い世代だけではなくて、おやじ世代にも大人気なのがあいみょんだ。
60近い僕のおやじもあいみょんの大ファンだから、その世代に彼女がどれくらい刺さっているかも実体験を持って感じている。
あいみょんの曲の特徴は、70年代のポップスの香りがプンプン漂っていることだ。そこが、おやじ世代には、単なる新しい楽曲ではなく、青春時代に聞いていたポップミュージックの面影があり、昔を思い出すそうだ。
また、それだけではなくて、「あなた解剖純愛歌~しね~」のように、刺激的で斬新な歌詞でも、現代っぽさ演出しながら話題性をよんでいる。
マーケティングの世界でも、記憶に残るのは知っているもの、注意を引くのは新規性という定説がある。あいみょんの曲は、この2つの要素をうまく融合させて、おやじ心を鷲掴みにしているのかもしれない。
ポップ音楽の中には、コンシューマー向けのマーケティングのヒントがたくさん潜んでいる。これまでにない斬新な受け手に取って心地のいいマーケティング手法で認知を広げていきたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?