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「Natureスマート電気」を始めました

遂に、「Natureスマート電気」という家庭向けに電気を売る事業を始めた。

「Natureスマート電気」では、電気料金が電気の市場価格と連動しているため、安い時間を意識して家電を操作することで、電気代を節約することができる。さらに、2021年5月にはスマートリモコン「Nature Remo」との連携を予定していて、その時間での電気料金単価に反応して家電が動く。

実は数年前から計画されていた電力小売事業への参入

Nature Remoのユーザーにとっては意外かもしれないが、これは4年前の2017年に投資家にプレゼンをした時から事業計画に織り込んでいたNatureの次なる一手だった。そして、そこにはダイナミックプライシング(市場価格連動)での電力小売事業ということも明記されていた。

Natureでは、IoTプロダクトから始め、電力の個人間売買プラットフォームを作ることを目指している。それは、それが今後の電力供給の地産地消というあるべき姿を実現するモデルであり、再エネ普及に拍車をかけるからだ。

一方で、以前のnoteでも書いた通り、今この瞬間に電力の個人間売買プラットフォームにニーズがあるかというと、まだない。それは、託送料金の改訂や太陽光発電や電気自動車の普及が必要だからだ。

では、Natureの次なる一手をどうすべきか。それについてここ数年間ずっと考えていた。そして、それは電力の世界へより踏み込んだ一手にしたかった。なぜなら、僕らは今、電力の文脈における”自然との共生をテクノロジーでドライブする”ことをミッションとしているからだ。(2021年11月より「自然との共生をドライブする」に変更)

電力の個人間売買プラットフォームも、言ってみれば電力小売事業の代替だ。なので、まずは電力小売事業に参入することで顧客獲得を目指し、最終的な電力の個人間売買プラットフォームへと繋げていく当初の計画が現状取り得るベストな選択という結論に至った。

この決定に至るまで僕も相当悩んでいた。電力小売事業をやるべきなのか。やるとしたらいつ参入するべきか。

Nature Remoの販売が好調で100万台まで積み上げる道筋が見えてきたこと、当時はコロナ禍で足元の電力市場価格が低水準で推移していたことも小売事業参入の背中を押したが、やっぱり最後は、電力事業の救世主として参画してくれたメンバーの「Natureは今後のミッション実現のために今、電力小売事業をやるべき」という強い言葉が大きかったと思う。

Natureとしてやる意義

単純に電気を売るだけでは、Natureとしてやるべき事業にはならない。あくまでNatureのミッションを具現化する形でやらないと意味がない。だから、Natureが初めて売る電気は、顧客がマーケット価格に反応して電気をより需要の少ない時間に使うように動機付けされるダイナミックプライシングの形でやる必要があった。再エネ電源で調達した電気を売るという選択肢もあるが、単純に"エコ"という大義で高い電気売ることはしたくなかった。

ダイナミックプライシングでNatureが電力小売事業をやる意味というのは、脱炭素の文脈で言うと需要の平準化による火力発電所の稼働の抑制効果だ。だけどそれだけではなく、これまでやってきたIoTデバイスのオートメーション機能(今後さらに進化予定!)によって、サービス利用者の方がより安いタイミングで電気を多く使うようにアシストできることにもある。

当然、年末年始の電力市場価格高騰により、市場価格連動が消費者に過度のリスクを負わせていると否定的な意見もあるのは承知している。Natureのダイナミックプライシングの価格では、顧客のリスクを限定するために100円/kWhでCapをかけることにした。

海外では取り入れられているダイナミックプライシング

このダイナミックプライシングの電気料金というのは、スマートメーターの普及と密接に結びついている。物理的に月に1度メーターを目視で検診する従来のメーターでは取れなかった、電気の30分毎の使用量をスマートメーター経由で取得できるようになったからこそ、可能になった料金体系だ。

そして、ダイナミックプライシングは、ヨーロッパではすでに家庭向けでも広く取り入れられていて、欧州のClean Energy for all Europeans Package(EU欧州委員会が発表した、気候変動と再生可能エネルギー分野での今後の政策案をまとめた包括的政策文書)でも、ダイナミックプライシングの導入を加盟国に要求している。

Dynamic electricity price contracts reflecting the changing prices on the spot or day-ahead markets will allow consumers to respond to price signals and actively manage their consumption.

(European Commissionの「New electricity market design: a fair deal for consumers」から抜粋:https://ec.europa.eu/energy/sites/default/files/documents/technical_memo_marketsconsumers.pdf)

特に、スマートメーターの普及率の高いスペインでは全体の約4割の消費者がダイナミックプライシングの料金体系で電気を買っている。

みんなで築く再エネ普及の未来

2020年10月26日、日本でもようやく2050年までにカーボンニュートラルを実現することが菅首相の所信表明演説の中で宣言された。米国でもバイデン大統領が誕生し、就任初日に温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を示す大統領令にもサインした。欧州でも、ポストコロナの経済復興として「グリーン・リカバリー計画」が公表された。

僕が、若かりし社会人2年目の頃(2009年なので、もう12年前)、その発展に生涯を捧げることを決心したクリーンエネルギーの時代がまさにようやく訪れているのはとても感慨深い。

再エネ普及はとても綺麗な将来像であるが、それは、これまで以上に難易度の高い電力系統運用が求められることでもある。再生可能エネルギーを普及させるためには、その発電量の変動を吸収するための調整力が必要になる。そして、そこには今まさに普及寸前の電気自動車が蓄電池として大きな役割を担うことは間違いない。

しかし、再エネ100%の世界を実現するにはそれだけでは足りない。人類が今迎えようとしている電力革命には、消費者の意識改革も必要だ。これまで地球環境を犠牲にしてきた火力発電で得られる利便性を多少失ってでも、我々は持続可能なエネルギー社会の実現のために再生可能エネルギーを受け入れていく必要がある。

ダイナミックプライシングの電気料金には、電力会社が単に背負ってきた電力需給という課題を消費者と分かち合うという効果もある。消費者も負担を強いられるわけではなく、安い時間帯で電気を使えば安くなるし、高い時間に電気を使えば高くなるという他の産業では昔から導入されている市場原理を受け入れるという話だ。

そして、Natureはその電力利用の最適化を消費者にとって犠牲の少ないものにするために、テクノロジーを駆使したIoTプロダクトを作ってきた。
その真価が発揮される時がようやくきたのだ。

まずは、Natureスマート電気への切り替えから。電気代を節約しながら、我々と一緒にデジタル電力革命を実現していきませんか?

最後に

Natureでは、人材を積極採用中です!

ぜひ、Natureに興味を持っていただいた方はお気軽にご応募ください。


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