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『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』ポケットにファンタジー突っ込んだ雑感


◆ポケモン映画配信開始

Amazon Prime Videoで8月4日(金)より、歴代ポケモン映画すべて配信開始された。

「夏はポケモン!」の合言葉にちなんで、ぼくはせっかくアマプラ会員なのだから見てみたい本心があった。
でも一体どこから手を付けようか?アニポケは長寿アニメでもあり、ゲーム本編に伴いシリーズが分けられているが、メインネームドを把握していれば小難しくないので、劇場版単体で見ても大丈Vだろう。ならば、きみにきめた!

やっぱり原点にして最高の『ミュウツーの逆襲』を最初に見るのがいいな!

と検索をかけたところ…

困ったなあ

先に『ルギア爆誕』を見てしまった…
(※時間があればこちらもレビュー書きます)

「ポケモン映画」って検索かけたらそっちが最初に出たので、つい手を出してしまった。でまあ、ならば「ミュウツーの逆襲」と検索をかけたら今度はこのリメイクであるEVOLUTIONが先にまあいいか!!よろしくなあ!

◆ミュウツーの逆襲

ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は、1998年7月12日に劇場公開された『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』のフルCGリメイク作品。2019年7月18日劇場公開なので、剣盾発売4ヶ月前となる。
念の為ではあるが、今作は唯一『劇場版ポケットモンスター』は冠から外されている。まあどのみちクッソ長くなるしなあ。館内での「まもなく、n時より劇場開始されます~」というアナウンスも大変だろう。

ポケットにファンタジーを詰め込みまくった頃に見たオリジナル版は、名作と言われてるのもすんなり納得なほど面白かった記憶があるのだが、何故そこまで名作と言われているのかがよく分からなかった。
そりゃあテーマが深い深いと言われまくっていたのは知っているのだが、このへんいまいち自分の中でピンと来ていなかった。どのみちポケモン=バトル!かわいい!ギエピー!の意識が芽生えていたので、そう小難しい哲学的な話題はカテエラだと思っていたのだ。
とはいえ、最近のマイポケモンブーム再熱に伴い改めてポケモン映画を見直したいなあと思った矢先に、今回の配信はとても嬉しい機会だった。

結論。考えれば考えるほど深い映画でした。
というわけで今回は映画本編の感想…というよりも、思ったことを徒然と書き出す内容です。「脚本の人そこまで考えてないと思うよ」と言われそうな邪推はかかっているかもしれないし、そも既に何年も前から挙げられた話題でn番煎じと言われるかもしれない。オリジナル版は四半世紀前に劇場公開されたからなあ。が、それでも今回たくわえるように思ったことははきだす。

◆ミュウツーへの同情

冒頭で描かれたミュウツーの生誕秘話はとてもえげつなく、悲しい。
最強のポケモンであるために、ミュウの遺伝子と人の手によって生み出された存在。ポケモンとは戦わせるだけではなく、ペットや友達のようにともに暮らしていく存在であるのに、本作のミュウツーはサカキ様にも利用されるくらい、真っ当な殺戮兵器として描写されている。
しかしフジ老人はゲーム本編だと手助けしてくれる方なのに、なんともまあ罪深い方になってしまった。最強のポケモンを生み出したいという欲は理解できなくはないのだが…

クソガキ時代に見たときはもれなくミュウツー=ワルモンと見做せたのだが、序盤から同情を誘う悲しい存在として描写されている。そりゃあこんな自分を生み出してしまった人間たちに逆襲しますわ。わからせてやりたくなりますわ。…まあサトシをはじめとする無関係のポケモントレーナーに対しての仕打ちは八つ当たりなのでヘイトを高めるに十分だったが。

なんでも『ミュウツーの逆襲』には完全版があるらしい。
冒頭のミュウツー生誕秘話が追加部分だそうで、これがあるからミュウツーに同情できたんだな。製作側も当時から「ミュウツーの悲しいバックボーンを描く必要を描くべきではないだろうか?」とか、何かしら思うことがあったのだろうか。非常に興味深い。まあ、放映時間の都合もあるかもしれないが。何かしら資料が欲しくなった。
なおフジ老人の娘・アイのコピー「アイツー」はEVOLUTIONでは登場していない。「いや誰だよ…?」とはぼくも思ったクチなのだが(全然覚えていなかった)、人間のコピーを登場させるのは流石に禁忌じみているし、登場させる必要はないと判断したのだろう。

しかし今のポケモンキッズからは「ミュウツーかわいそう!」となるのだろうか、少しばかり気になるな。それよりも「ミュウツー鬼つええ!!かっけえ!!」となるかもしれない。
ミュウツー自体、強者のカリスマ性を纏う言動が見られたからな。生後からそこまで経過していないだろうに、あのシブい声も相まって大人のような風格があってカッコイイ。最後まで格落ちしなかったのがミュウツーの魅力だ。

◆この世に生まれ落ちればそれは平等に生き物

恐らく本作のテーマのひとつとして、「作られた存在であれど、皆同じ生き物」なのだと思われる。

この映画でまず面白いと思ったこと。
ミュウツーは作られた存在でありながら、誕生時点で既に生き物同然なんだよな。

恐るべき殺戮兵器として描かれているのでそちらに注目されがちだろうが、人間の言語を介し、己の存在意義に葛藤し、自ら「逆襲」という選択をした時点で凄まじい人間臭さがあった。
後発のキャラであるが、『HUNTER×HUNTER』のメルエムに近いかもしれない。メルエムも最初はバケモノじみていたが、コムギと出会い、自分の名前は何なのか、何のために生まれてきたのか葛藤していたからな。
まあ、本来のポケモンに人間臭さを求めるのは筋違いかもしれないが、人語を喋れないポケモンだって動作や表情でなにを考えているのかがわかりやすいから十分だ。本作ではミュウツーボールから解放された後のゼニガメやフシギダネの「あ…あれ…?」なリアクション、サトシ石化後に涙を流すピカチュウがとても心情を探りやすい。

…でも悲しいかな。同じく人語を介せるロケット団のニャースも人間臭い一面があったとはいえ、最愛のマドンニャにプロポーズするも「人間の言葉を話すニャースは気持ち悪い」と失恋に至った悲しい過去があったんだよな…まあ全員が全員、しゃべるポケモンを許容できるとは言い難いしな。

中盤、コピーポケモンが誕生する過程も今回CGで描かれたからか生々しい誕生の過程であったが、サトシ石化後にコピーポケモンも一緒に涙を流していたのも正しい生き物としての在り方だ。
サトシのポケモンならともかく、今回出会ったばかりの知らないポケモンたちも泣くほどのものなのか…?とぶっちゃけ疑問ではあったのだが、これはあれだ、フィクションでもあるある、自分はそんなつもりじゃないのに目から涙が…ってやつなのかもしれない。醜い戦いの果てに生み出したのがこのような悲劇。思わず泣いてしまうのも理解できなくはないのだ。

◆記憶消去という思いきった判断

ミュウツーたちの別れの後、冒頭のポケセンにテレポートされたサトシたちはミュウツーの城での出来事の記憶がきれいさっぱりなくなっていた。

…え!?まじで!?とびっくりした。たまげた。
こっちも全然記憶から抜け落ちていたのだが、そんな思い切った結末だったのか…いやしかしまあ、アニポケ本編との整合性を付けるには面白い判断だ。今後何かしらのイベントが発生し、映画本編とは異なる個体のミュウツーが本編に登場させることもできる。記憶がないから「お前!あのときの…?」とはならない。

実際別個体のミュウツーは登場しなかったそうだが、その代わり『ミュウツー!我ハココニ在リ』という後日談があるそうだ。名前だけはどこかで聞いたことがあるのだが、後日談だとは全然知らなかった。タイトルからしてまたミュウツーが敵として立ちはだかるのかと思った。
Amazon Primeでは旧無印シーズン2(金銀編)第63~65話として配信済とのことなので、こちらも併せて見てみたい。

◆リメイクとして

もうちょっと冒険してほしかったなという正直な意見。
本筋自体はオリジナル版と変わっていない。無駄に変な脚色を取り入れず、オリジナル版を尊重したつくりなのは正しくあるのだが…それでも物足りなさは否めなかった。「あーなついな」と思いながら視聴できたが、オリジナル版を既に見た者としては特に新鮮味はなかったかもしれない。
Wikiを見ると結構変更・追加シーンがあったそうだが、マイナーチェンジ程度っぽい。

剣盾発売前なので「ダイマックス」の概念を先行して取り入れても良かったのでは?と思ったが(『ORIGIN』の終盤で描かれたリザードンのメガシンカのように)、ガラル地方が舞台ではないから設定的にも無理なんだよな…あとクソデカミュウツーってのも変な話だし。

いちおう、ボイジャーさんがキャモメ発言したり、『サン・ムーン』からぬしポケモン戦のBGMが流れたり、フシギバナVSコピーフシギバナではエナジーボールやリーフストームを使ってくるのはニヤリとさせられた。
当時のポケモン最新作は『Let’s GO!ピカチュウ・イーブイ』なので(『ウルトラサン・ウルトラムーン』ではない)、最新の現行だからこそできる要素を取り入れたとも考えられる。それだけに、もっとバンバンやってほしかったのが正直な本音。レイモンドがドンファン以外の他地方ポケモンを使ってくるサプライズもできたんじゃないかな。それこそガラルの新ポケとかリージョンフォルムとかさ。

CGについては、ポケモンのほうは好印象。ピカチュウは同年に劇場公開された『名探偵ピカチュウ』とは異なるベクトルのフサフサ感があってすごく良かった。触ってみたい。ギャロップは炎がとても美しかった。バトルシーンもアニメでは不可能な迫力があって必見だ。
一方で人間キャラは流石に最後まで慣れなかったな…CGといっても剣盾やSVとは違って結構リアル寄りなのでどうにも浮いてしまっているというか。

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