見出し画像

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』第4話感想 失われた未来を求めてもいい世界線


◆これまでの感想

◆雫(Windows版)

Aパート開幕、Leafの『雫』のOPが流れた。
DOS版が1996年1月26日発売で、今回導入したWindows版が6月28日発売。前回ピックアップされていた『痕』は『雫』の半年後に発売なんだなあ。一文字タイトルからして関係しているのは火を見るよりも確定的に明らかだが。

初めてこれを見たぼくの第一印象。FM音源のBGMがすごく良い。
前回の感想で軽く触れた『YUNO』に通じる良さがある。とても言語化しづらいのだが、なんと言えばいいか。エロゲという媒体らしく非常にアングラティックな旋律になっている。それがクッソたまらない。
とはいえ、そんなにエロゲっぽくないのは不穏を煽るタイトルロゴは勿論、そもそもサスペンス系にあたる。Wikiを見るに『弟切草』の手法でエロゲを作るコンセプトだそうで、適当に画像検索をかけるとめちゃくちゃ納得。時代を感じるフォントなのもあるな。

◆すごいよWindowsさん

「やっぱりWindowsはいいよ。色は多いし、フォトショもいいし、タブレットも使いやすいし。もう98には戻れないわ」

タブレットやフォトショってこの時代からあるんだ…
なんかもう、今でも主流なものが四半世紀前から存在していることに「まっじでえ!?」とびっくりさせられているなこのアニメ。まあそれらがなかったら逆にどうしていたのよと疑問が生じるが。

前回からの98vsWin問題だが、これは確かにWindowsが有利だな…生まれてからずっとWindowsとの付き合いだったぼくからすれば、98の縛りを徐々に知っていると、これは時代に沿って乗り換えるべきだなとわからせてくれる。コンシューマーゲームにも言えることだが、やはり限界を考慮しなければならない。

◆店舗特典はまだないよ(泣)

山田さん突然の百合営業はまずいですわよ!!
どうやらエロゲ沼にハマったようだ。niftyってそれほど当時主流のSNSみたいなものだったんだな。

店舗特典ってこの時代にはまだなかったんだな。
個人的には00年代はテレカが殆ど、2010年前後には抱き枕カバーが導入、それ以降はタペストリーが定番になったイメージ。最近は抱き枕カバーが特典につけられるのはあまり見られなくなったか。単独販売か、特典ではなく豪華版に付属されるケースが多い。

山田さんに店舗特典の存在について軽く語っていたのは僅かに未来が変わっちゃう案件ではないだろうか?2023年現在の彼女がどのような立場なのかは分からないが、エロゲ関係のお仕事に携わるのならわれわれの世界線よりも早く店舗特典が導入されそう。そしてチャンコ増田さんがマネーの虎で成功しそう。抱き枕カバーはいくらなんでも時代が早すぎたんだ。

◆寝袋

1996年の夏に屋外で寝袋。
マモルくんちの外でこうしてるストロングスタイルな不審者ムーヴもすごいけど、蒸し暑くね…?それでのび太ばりに眠りにつけるのもすごいぞ。案の定寝ている最中にマモルくんが失踪しちゃったのは、まあコノハちゃんアホの子やし…

当時の東京の気温を調べたところ、1996年7月当時の最高気温は34.8、最低気温は17.2。四半世紀前だから当然…と言うのもあれなんだが、今見ると全然涼しいほうで羨める。それでも屋外で寝られるとは、コノハちゃんって奴は結構タフだな。

◆コミックマーケット50

すごい数の先輩参加者が集まってきている

1996年の夏というわけでコミケがやってきた。
今と変わらず国際展示場での開催である。親の顔よりも見た戦場、サバフェスの聖地。が、ググってみると、国際展示場での開催は実は今回が初めてなのでクッソ広くて移動が大変だったそうだ。初めてとなれば当時は列整理とか大変だったろうな…それが長年試行錯誤されて現在に至るのだろう。因みに8月3・4日に開催とのことで御盆ではないんだな。

コミケ50、というわけでちょうど50回である。
僕は常々思っているんですが、コミケがこの時代から既に存在しているのがとても信じられないんだよな。なにせ1975年からスタートともう半世紀近い歴史を築いている。ぼくが保育園でピッピをかわいがったり、小学生時代コロコロを読んでいたり、中学時代邪気眼に目覚めていたその裏で、コミケで薄い本が販売されていたという事実がとても想像できないといいますか。エロゲが発売していたことにも言えるが。なんというか、裏の世界だよなあと。

ちなみにぼくが初めてコミケの存在を知ったのが確か2005年?で、初めて行ったのが2010年夏のC78です。先々月の夏コミがC102だったから、もう大分数字がかけ離れていることに恐怖を覚えている。10年以上・20回以上コミケに行っているのに全然慣れていない。

◆僕自身が98になることだ

マモルくんは98のコスプレダンボールガンダムのご先祖だ…!!
なんかでけえの買っててケジメとか言ってたアンサーがこれかよ!最初は何やってんだお前としか思えなかったのだが、こういうコスプレイヤーが案外コミケにいるから油断できない謎の解像度の高さがある。そも、マモルくんは98が大好きなのだから、自分自身がガンダムになるように愛を示してもいいのだ。コミケとはそういう愛のアッピルが許されているのだ。…まあデカすぎると愛を語る以前に他の参加者への迷惑になりかねないが、今回その点はざっくり流そう!

つーかそれより、BGMアウトォオオオオーーーーーーーー!!!!!
ガチで露骨に似せてて笑ったけど、これ円盤だと確実に差し替えられそうなヤツだろ!まあ、『SHIROBAKO』でも庵野監督のそっくりさん出せたし、『銀魂』のアニメ版でも懲りずにヘヴァンドロゴンを無事発進させた上に演出盛ったし、多くの先輩方が大丈夫なんだから本作もきっと大丈夫でしょう。まごころに、愛をこめれば。

◆可愛いだけじゃないコノハちゃん

マモルくんが98のコスプレをしたケジメとは、98の葬式を意味するのだという。ムチャクチャではあるが、彼は信じてしまったのだ。コノハちゃんが本当に未来からやってきたことを。そして、これまで本当に98を知らない様子からして、この先の未来では98が終わってしまったことを。

…悲しい結末だ。
ただでさえ1996年当時既に98からWinへ移行している中、コノハちゃんという未来の存在が根拠となり、マモルくんの中で段々真実味を帯びてくるのは残酷な仕打ちだ。タイムスリップものにおける負の要素の描写としては非常に興味深いが…

だが、ここで決定的に流れを変わった。

「だったら、98のない未来なんて、マモルくんが変えちゃえばいいんだよ!」

未来は変えてしまえばいい。
すごく良い言葉ですね。勿論気に入った。

未来に干渉するような言動は当然NGだし、なによりこの手のタイムスリップものは現地人の尊厳を破壊してはいけない。だが、これから自分の手で未来を変えていいと示唆しても全然良い。上等じゃないか。勿論われわれの世界線とは異なる世界に変革されるが、フィクションだからこそやってもいいだろう。可能かどうかは机上の理論に過ぎないが、98が主流になる世界、面白いじゃないか。

正直マモルくんの98に拘りたい精神問題については、前回の時点ではWindowsとの違いがイマイチピンと来ていないぼくからすれば「結局は面白いエロゲが作れればそれでいいんじゃね??」としか言いようがなく、あまり食いつけていなかった。
ところが今週『雫』のくだりで変化に納得し、マモルくんは潔くこの運命を受け入れられなければならないのか…と同情できるようになったところで、コノハちゃんの主人公ムーヴにはアツくなれた。マモルくんの「未来は変えるな」という忠告は前フリだったのかもしれない。だからこそ、定められた未来への反逆としてアツい。

ここまでは「興味深いしそこそこ面白い」の領域だったのだが、このコノハちゃんの主人公ムーヴで格段に面白くなり、アニメオリジナル主人公ならではの強みを一気に引き出してくれたのもポイント高い。まだ自分の中ではダークホースとまではいかないが、是非そこを目指してほしいです。

◆未来へ

今週ラスト来るだろうなあと予感すれば、やはり来た。
今回はマモルくんだけガチのコノハちゃん消失を目撃してしまったのが、今後どう影響を及ぼすのかのフックだろうか。夢でも見ているのを疑えるくらいにファンタジー案件だもんな。
でもまあ「未来は変えるな」と忠告していた子だから口が軽くならないだろうしそこまで作劇自体に関与しなそう。

次に過去へ飛ぶのは1998~99年になると予想。『Kanon』『こみパ』がまさにその時代だったから。

この記事が参加している募集

#アニメ感想文

12,415件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?