雪溶けて、地獄の春のガーデンで
春になれば、生活はいろいろと冬よりは楽になると思っていた。
屋内も屋外の氷点下では体が動かず何もできない。
そして定期的に降る雪を雪かきしなければならない。
時間がない中で時間と精神力を取られて面倒なうえに、量が多いと一筋縄ではいかない。
雪国にやっと春が来た。
そこでさらなる地獄をみた。
家の中にこもっていたたった2日のあいだで草木が生い茂り出したのである。
あたり一面のつくしつくしつくしつくしつくしつくしつくしつくしつくしつくし
ゾッとした。
これが家の敷地内すべてを包囲して、あっちにもこっちにも所構わず所狭しと生え散らかしているのである。
集合恐怖症でなくとも、あまりの気持ち悪さにゾッとした。
雪かきより厄介な、つくしかきをこれから毎日しなければならなくなった。
汗まみれ泥まみれになりながら、つくしを一本一本とりつづけたが、途方もない量で、何時間経ってもどうにもならなかった。
また2-3日すれば次のつくしが伸びてきてしまう。
誰も手伝ってはくれないし、おまけに蟻や蜘蛛やダンゴムシや羽虫までどこまでも大量についてくる。
そして照りつける太陽と、風で舞い上がる砂埃とつくしの胞子。
もはや雪かきよりも地獄である。
昨日からの地道な「毛抜きスタイル」から、物置から発掘した草刈鎌での「毛根刈りスタイル」に変えてみたが、それでもどうにもなりそうにない。
地中の根があまりにも深すぎる&蜘蛛の巣のように、家の敷地内一面に張り巡らされてしまっている。
親族が昨年蒔いたという除草剤は何の効果も出せていない。
ビッグモーターを家に呼んできてほしい。木の切り株も大量に残っていて困ってるし、これもまとめて枯らしつくしてほしい。
お隣さんや他のご近所さんにはつくしははえていないのに、うちだけつくしに寄生されてしまっている。
隣のもう一軒の自分の家もつくしに寄生されてしまっている。
もう地獄だ、地獄すぎる。キモすぎる。生物は本当に嫌いだ。
鬱が悪化した。
とりあえず発狂しながら、草刈り鎌を敷地内に渾身の力で叩きつけまくった。
掘れそうな根はその力に任せて掘ったものの、たかが知れている。
第二陣、第三陣がせめてくるまえに、明日またなんとかしなければならない。
こんなときに限って親族は誰も連絡を返さない。
雪が溶けて川になって流れていってほしくない。
桜も咲いてほしくない。
最悪の春である。
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