終わりのチャイム2【小説】

僕はこれからどうすれば?疑問だらけの人生を歩むのか迷った。あの事件の真相を知るまでは生きていこう。心に誓った。僕は通信生高校に通いながら記者になる夢を抱いた。

記者になって、あの事件を取材したい。通っていた学校への未練の気持ちもあった。やっとの思いで大学に進学して、編集社に就職した。記者になることが出きた。もちろん、ネタを売った編集社に入社。これはゴールではない。スタート。これからが本番だ。真実への扉は近くにきている。それには、鍵が必要だ。早速取材しよう。

通っていた学校に出向いた。懐かしい。チャイムの音が聞こえる。忘れていたこの感触。やる気が湧いてくる。緊張しながら校門前の警備室に寄った。

「取材に来ました」

警備員さんの顔はポカーンとしている。昔、静止を振り払った警備員と同じ人だ。僕のことを忘れているようだ。当たり前か。6年も前の話だからな。その警備員さんに当時のことを話した。僕があの事件を知っている生徒だということも。

納得してくれたようで、屋上の鍵をくれた。相変わらず立ち入り禁止のようだ。久しぶりの屋上。風が気持ちいい。機械室の方へ目を向ける。機械室のドアは開放されていた。当時のような異臭もしなかった。

機械室に入った。埃だらけの部屋だ。掃除はしていないようだ。奥の柱の下に一枚の紙が落ちていた。古い紙にはチャイムの音の仕組みが書かれていた。

チャイム音には2種類がある。一つ目は機械で鳴る音。ニつ目は・・・

「誰だ!」

厳つい声に驚いた。持っていた紙を素早くポケットに入れて、後ろを向いた。先生らしき人が懐中電灯を向けていた。よく見ると、その人は当時の担任だった。観念して、これまでのことを話した。先生は、その行動力に感激してくれて取材を許可した。

これで堂々と取材出来る。先生は用事があると足早に屋上を出ていった。紙の続きが気になった。二つ目の音は声でチャイム音を奏でること。どういうことだ?二つ目のことは学校の七不思議という本に書いているそうだ。図書館に行って、その本を調べてみた。

司書員に聞いて、その本を見つけた。本棚の近くの机に座り、ページをめくっていくと女性が機械室に籠もりチャイム音を奏でるという伝統的な行事があると記載されたいた。普通に考えればそんなことは有り得ないと思ったが、自分は過去の死体から推測して、有り得ないことではないと確信した。

あの死体はチャイム音を奏でていた女性だったのか。大スクープだ。これは来週の週刊誌に載せる事ができる。早速、編集社のデスクで原稿を執筆した。そして、一週間後に発売された週刊誌の売上は伸びた。公に出なかった事件の真相が世間に出て、しかもファンタジーな真相だったのは世間に衝撃を与えた。

翌日、別の週刊誌には自身の週刊誌が捏造をしていると一面に書いていた。これは衝撃を与えた。またたく間に苦情の電話やファックスが届いた。対応に追われる時間の隙間に事情を確認する為に別の編集社に電話した。

読者の振りをして、話を聞くと、そんな事実はなくて、死体遺棄事件は先生による犯行だったそうだ。被害者は女子生徒だった。犯人は個人情報の観点から伝えられることはなかったが、学校側に騙されたことになる。僕は怒りが溢れかえっていた。

翌日、怒りに身を任せながら、学校に向かった。着いたと同時に校門の前にサイレンを鳴らしたパトカーが止まった。複数の警察官が校舎に入っていく。数分すると警察官に手錠をかけられた担任の先生が出てきた。事件の犯人ってまさか。僕を横切る瞬間に担任は

「終わりだよ」

と一言呟いて、パトカーに乗った。機械で奏でられたチャイム音が動き出すパトカーを見送るように、最終下校の合図である終わりのチャイムはそっと音を奏でていた。

〜作者からのメッセージ〜
この話は2話構成です。まず、1話を見てから、ご覧ください。2話構成は初めての試みです。どうでしたか?なかなかのストーリーでしょう。ミステリアスな展開と恐怖がマッチした作品をイメージしました。

植田晴人
偽名。趣味でショートショートや物語小説を書いています。書いた小説は15作以上。