041橋からの眺め

#041「橋からの眺め」

ナショナルシアターライヴ2本目観てきました。
貧困層の港街で暮らす一家と、そこに仕事を求めて流れ着く不法就労者達の話。舞台は、現在は超お洒落タウン化しているNYのブルックリン。
近年までブルックリンは治安が悪く、超観光名所のブルックリンブリッジの下にはプロジェクトと呼ばれる低所得者用の公共団地が広がっていた。エリアによっては、今も。

家族は、夫婦とその姪(親は既に他界している感じ)の3人で、その妻の親戚の兄弟がイタリアから密入国してくる。仕事をして稼いで、母国の家族に仕送りをしたい兄と、イタリアでは仕事が無いから一緒に来ただけの弟。
その弟と、娘の様に育ててきた姪が仲良くなっていくのを、主人公は露骨に拒絶し、捩れた愛所が暴走し、憎しみがどうにもならないところまでエスカレートしていく。
物語は、娘の結婚を止められなかった父が、最大の裏切りをすることで、周りも本人も、誰にとっても最も不幸なエンディングを迎える。

一人一人がどんどん疑心暗鬼になって、悪循環に陥っていく様子が見ていられない感じだった。憎しみを抑えて上っ面で会話をするシーンの、独特な間。
演劇ならではの演出で、息が詰まる様な緊張感に支配される。
娘に行きすぎた愛情を向ける夫に耐えられない妻。
夫は、何を言ってもしても、弟は頭がおかしいと一蹴して、会話が出来ない。何の理屈も通らず、とにかく力で抑え付けてくる感じは、恐怖を感じる。
娘は、そんな父親でも祝福されたいと望むけれど、母からもだんだん厳しく当たられる様になって、女対女の構図になる瞬間があって、非常に気持ち悪い。

もう、全然分かり合えない、全然好きでも無い、憎しみあっている人達が、娘の結婚によってそれでも家族になってしまうことが怖かった。
家族という悲劇は沢山ある。

そして、ブルックリンブリッジから眺めた眼下に広がる、無数の家族それぞれの中に、同様の悲劇が含まれているのだと思うと、途方も無い気持ちになる。