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あの日と同じ桜吹く

卒業式。今日で高校生活も最後となる日。ある者は泣きじゃくり、ある者は再会の約束を語り合う。卒業アルバムに思いを連ねる者やお祭りのように騒ぐ者など人様々だ

「…..」

校門のある道に等間隔で並ぶ桜並木を僕は一人で眺めていた。3年前、ここを歩いて新しい世界に踏み込んだあの日を思いおこす

初めての通学路、初めてのブレザー、初めての高校。何もかもが初めてで、ドキドキとワクワクが心の全てを占めていたあの日

「彼と出会ったんだよね」

優しく吹く風の中に桜の花びらが踊るように舞っていた。そう、まさに今みたいに

桜の木からはらはらと落ちてくる花びらが、ふわりと吹く風になびいて美しいピンク色に世界を染め上げていく

「あの日から僕の世界は変わったんだよ」

ぽつりとそう呟く。誰かに届くわけでもないこの声は、僕と桜にしか聞こえない

「もしかしたら、僕はあの出会った時から君に一目惚れしてたんじゃないかな。ちょっと自惚れすぎか」

時が経っても色褪せることのない記憶の鮮明さについ自虐的になってしまう

「でも、君と出会ってからの僕の人生は天国みたいだった。楽しくて、嬉しくて、幸せで、少しだけ恥ずかしくて」

胸にそっと手を当てて目を閉じる。桜の花びらが手にそっとくっついた

これまでの彼との思い出がいくつも脳裏によぎっていく。彼の笑顔ばかり思い浮かぶが、それだけ彼を笑顔に出来たのだろうな

「これからもずっと笑っていこうね。僕も君と一緒に笑い合いたいな」

言葉にする度にどんどん確信する。彼と出会えた奇跡は、僕の人生の中でなによりも幸運な事だ

言葉では足りないくらいに彼と出逢えた事が嬉しい。彼と出逢わせてくれたこの高校も大好きだ

「愛してる」

ふわっ

そう呟くと、風が少し強く吹き桜吹雪が巻き起こる。僕の心のように舞い上がったそれを見て穏やかな気持ちになる

すると、僕の後ろから近づいてくる足音が

「こんな所にいたのか」

どうやら彼が僕を探しに来てくれたようだ

「もう他の皆も教室向かったぞ。俺達ももう一度教室戻ろうぜ」

「うん」

「ん」

すると、そっと彼が僕に手を差し出した

「誰も見てないからな」

「….ふふふ。うん」

彼の手をぎゅっと握る。そこにヒラリと花びらが落ちてきた

「……懐かしいな」

「え?」

「君と出会ったあの日も、そんな風に君に桜の花びらが付いてたよ。こんなにたくさんはついてなかったけどさ」

懐かしむような様子の彼にそう言われて顔が緩んでしまう

「ふふふ、僕もこの景色を見てその日を思い出してたんだ」

「そっか。まさかこんな風になるとはあの時は思ってなかったな」

「僕もだよ。でも!すっごく幸せだからいいんだ!」

「俺も幸せだよ」

澄み渡るほどの綺麗な青空に桜吹雪、そこに彼の眩しい笑顔がとても輝いてみえた

「……ねえ」

「ん?」

くしゃり

僕のポケットの中で少し音がする。用意したけど、渡す必要もなさそうだな

「….ううん、なんでもない」

「え、なんだよ、気になるだろ」

彼が少し不満そうにする

「なんでもないの!さ、教室戻ろ!」

「なんなんだよ、まったく」

この手紙はいつか渡すよ

二人で笑いながら駆けていく。その背中を見守るように、押すように、桜の花びらが舞っていた



いつまでも あなたのそばに

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