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駆け込み女と駆け出し男

映画の虫

監督・脚本:原田眞人

2015年一番好きだった映画。

「離婚の話なんだ」と思って観ていたけれど、終わったら「純愛の話だった」

この映画は去年の5月に公開された映画で
予告編を観たときから期待値がかなり高くて
好きな監督だから、好きな原作だからとかそういうの関係無く「よし、これは面白そうだから、観よう」と思った映画でした。

公開してすぐに観に行って、やっぱりとても面白くて
ああ幸せな時間だった。と思っていたわけですが

それから5ヶ月ほどが経ったころ、再び「観たい」という気持ちが湧き上がってきたんです。

けれどDVDになるのは先で。(今はもうなってますね)
そんなとき、目黒シネマさんで、上映をしているのを見つけました。

しかも2本立て…!?
アニメーション作品の「百日紅」と「駆け込み女と駆け出し男」が交互に上映されており、1回分のチケットで、どちらの映画も観れてしまう……

なんていい上映だと、ワクワクしながら入場。

その幸せに浸っていたら
映画館に入ったのが12:50で、出てきたのが19:45くらい。

あら?

7時間?

7時間もいた?

なんと、「駆け込み女〜」と「百日紅」を順に観て、帰る予定だったのですが
やっぱり「駆け込み女〜」が好きすぎて
2度観てしまったんですね。駆け込み→百日紅→駆け込み

同じ映画を、同じ日に、映画館で繰り返し観たのは初めてです。
よく昔の人が「僕は映画館に入り浸って、好きな映画を何度も何度も、記憶するくらい観たよ」と話される感覚がよくわかりました。

できることなら私もしたい。

好きな映画って何度も観れますね。
しかも1回目より、2回目の方がやっぱり冷静に映画を分析して観れるから
この表情はこんな意味がつまっていたのか
このセリフはあのひとに向けての言葉だったのか
このカットは絶対NGを使っていて、それがいい味になっているな。

と、たくさん収穫できて、大変幸せでした。

DVDは繰り返し観れるんですが
暗い空間で集中して観るのとは全然違う。吸収率が違う。



さて、中身についての言及ですが
まず、好きなのはオープニング。

幕府が決めた、馬鹿らしい罰則を軽やかに批判する。
のっけから早口。セリフは形式的で、正直なにを言っているのか1回観ただけでは分からない。
だけど軽快。
この男は、自分の中の正義を持ってして
女たちの心を、救える男なのだと言っているよう。
しかも彼自身はその自覚はとくに無く、彼のやりたいようにやっているだけ。

その何かをさらっていくような感じ、そして重みのある音楽で、オープニングだけで私は泣ける。

役者が、役を得て、力を抜群に発揮している、最高の形を目に出来るのは、幸せなことなんですねぇ…。
端役まで一人一人が、マッチして。それがとても嬉しい。

最初、戸田恵梨香が演じた「じょご」という女性は満島ひかりにオファーがきていたそうですね。
それを、脚本を読んだ満島ひかりが、自分はこっちの役がやってみたいと「お吟」を選んだそうで。

戸田恵梨香と大泉洋の組み合わせが観ていて大変よかったので、この配役にはありがたや…という気持ちでした。

満島ひかりもとても綺麗。

駆け込みという「制度」を説明するのが、(それと同時に物語を進行するのが)難しかっただろうと思い、そこが1度だけでは理解しきれない人がいたら残念だなと。

別の、映画レビューのアプリをちらちら見ていると
「言葉」が難しくて分からなかったという感想があって……それはなんていうかなんかもう私が(←スタッフでもないんだけど)悔しい。

あの言葉が、いいのに!!!!

それを分かりにくいから止めて欲しいなんて…うう。
本当に今、どんどん「分かりやすいものがイイモノ」という方へと流れているのは危惧する点。

確かに私も、難しい映画とか、実験映像とか、そんなに好きじゃないです。
出来ることなら、娯楽映画とか、演劇とかを見ていたい。

でもやっぱり私は映画は、一歩踏み込んでみると違った見え方があることを知っているから、もっと、キャストだけではなく、映画そのものを芸術的な観点で感じて欲しい。と思うことは、あります。
特に若い世代に。

うぐぐ……。
私たち作り手が若い世代を刺激するような物語を作っていくしかないですね。

劇中、たくさんの男女のエピソードが散りばめられておりますが

感動するのに、混乱する「あじ売り」の姉妹の話。
例えば、あれは無しでも物語は進んでいくので、サブのエピソードなわけですが、でもあれがあることによって確かに深みは出ているので
もう少し分かりやすく着地できたら……!と。そこだけ!そこだけ気になってしまいました。
なんなんでしょう、分かるけど、分からないという感覚。悔しい。

好きなシーンはたくさん。

*まず、お吟がお寺に入るときに、なぜか涙が溢れてしまうところ。
明確な理由は分からないけれど、あそこで胸がいっぱいになる気持ちが分かる。

*あとはやっぱり、見せ場である
やくざな輩を口八丁で追い返す信次郎さんのシーン。
あそこ、大泉さん橋本さんはもちろん、下っ端役の音尾さんがいいんですよね。笑
「生まれ変わったら…あんたの弟子になる!」

*「素敵」という言葉を説明する場面。
素敵という言葉は、私自身すごく好きでよく使うんですが、ああそうか、この言葉もどこかで生まれた瞬間があって、それまではみんな知らなかったんだなぁって。
改めてそういう場面を作ってる監督がすごい。

*お吟が改めてじょこに出会えてよかった。と伝えるところ。

*岩陰で、信次郎がじょごにプロポーズする場面。

*法秀尼の長めの傘。

*アクロバティックなキスシーン笑

なんでしょう。
あの、じょごと信次郎の関係って、改めて好意を伝えたわけではないけれど
もう決まりごとのように、しかし初々しさを抱いたまま進んで行くわけで。

確かに信次郎はじょごを救ったんだけれど、それはあくまでも天然で、
じょごは以前人妻だったわけだし、鉄練りを切り盛りしていたという面の強さもある。
それで、あのキスシーンに至って。

なんて正しい形なんだろうと。心に刺さった。笑

確かにこの2人のキスシーンは、こうでしか見れない気がする……
変に正面からいかれるとちょっと見たくないというか……

(日本人のキスシーンってこれくらいがいいんじゃないか説)

物語の着地の仕方
戯作者志望の彼を、馬琴先生の元へ連れていくじょご。
この2人が、2人でなければいけないというパズルのピースがカタカタと埋まっていく感じが、素敵

こういう、ハッピーエンドが好きです。

そう、確かに現実はこんなもので無かったとしても。
や、ないからこそ。
映画は、こういうハッピーエンドで終わって欲しい。と、思う。

いつか原田監督の作品にスタッフとして、参加してみたい。大変そうだけれど。

ぜひ、まだ観ていない方にはDVDででも観て欲しい一作でした。

やっと書けた…!


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