【ショートストリー】初恋の人
仕事を定時に終えて、電車の改札口を通り菅野エミリは、エスカレーターでホームに上がった。帰宅ラッシュで学生もスーツ姿のサラリーマンらが、先ほど駅のホームに入って来た電車に乗り込んで行く。エミリも同じようにその電車に乗る乗った。座席はどこも皆んな座っている。つり革を掴んでエミリは立って、電車の窓を見ながら今日の仕事の事を思い返していた。
あの量だと納期に間に合うだらうか?
「あれ?」と、エミリは小さく言葉を発した。
電車の窓越しに、中学生のころ好きだった初恋の男子が通った気がする。追いかけようか?
まもなく電車が発車すると、車掌が言った。
そのため、エミリはその場から離れることはなかった。だけど同じ電車に乗っていると思うだけで、エミリは心臓がバクバクした。
電車が発車すると、エミリは本を鞄から取り出して読んだ。時々電車が少し揺れた。エミリは、つり革をしっかり掴んだ。
外は暗闇で線路脇の店は看板に明かりを点している。
電車は終点なので止まった、乗客はどんどん電車から降りてエミリもその後に着いて行った。
改札口を出て、直ぐにバスに乗る。人が多い。バスの中で、乗客にぶつからないように立っていると、初恋の人もどうやら同じバスに乗った。
そういえば中学生の頃、その初恋の人がどんなところに住んでいるのか、自転車に乗って見に行った事があった。そんな時、突然雨が降り出して自転車で黙って初恋の人の家の軒下で雨宿りさせてもらったのだ。
そうこうしてるうちに、次がエミリと初恋の人が確か一緒に降りる停留所だ。
エミリが次止まりますのボタンを押した。
あの中学の頃より格好良くなっていた。私に気づいてくれるだろうか?
初恋の人が先に降りた。他の乗客も降りた。
エミリも降りた。そして信号を渡った。
初恋の人は、信号とは逆の方向へになる。そしてエミリには気付かず夜の暗闇に姿が消えて行った。
あれから二年、食事を終えたエミリはテレビを点けた。はっとした。
初恋の人が、歌って踊るアイドル。良くみるとべつじん だった。
でも懐かしい。でも年もとって来たな。
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