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バースデープレートの呪縛を解いてください。

バースデープレート。

友達に、恋人に、家族に
サプライズしても嬉しい。されても嬉しい。
デザートだけじゃなくて、愛情や思い出が沢山乗っかっている素敵なプレート。

なのに、私は見るたびに苦しくなる。

去年の恋人の誕生日。
私がずっと気になっていたが、価格帯が高くてなかなか行く勇気がなかった都内のビストロ。せっかくの機会だし、と言い聞かせ誕生日の3週間前に予約した。バースデープレートの予約もバッチリである。プレートに書いてもらう名前も間違えてもらわないように、2回繰り返した。雰囲気も素敵で誕生日の締めに相応しいと確信していた。自信があった。こりゃ最高の誕生日の締めになるな、絶対喜んでくれるな、と。

誕生日当日。
お店はネットで見ていた通り、それ以上に素敵な空間で、全てにときめいた。
誕生日ということだしワインを開けようとなって、ワインを頼んだ。5本くらい説明してくれたが、どのワインも作られた背景などを詳しく教えてくれて面白かった。値段を伝えてくれなかったのが少し不安ではあったが(恋人が誕生日であることを配慮してくれたのだろうか、ありがとうございます)、主役である恋人の気になるワインを選択して開けてもらった。おめでたい味がした。料理もどれも素晴らしく、口と胃が大喜びしていた。

そして最後のメイン料理はなんのお肉か忘れてしまったが、赤身のお肉だった。
勿論これも口と胃が大喜びであった。大はしゃぎ。胃から「ありがとう」って聞こえた気がする。とにかく、美味しかったことを伝えたい。

恋人がお手洗いに行った時に、店員さんが
「メイン料理の後にプレートお持ちしますね」と確認してくれた。お肉を食べながらソワソワしていた。マンツーマンでバースデープレートをサプライズしたことが無かったので、プレートが来たら何を言えば良いのだろう、とか写真っていつ撮ればいいんだろう、とかぐるぐる考えていた。

そんなお肉を食べている最中にちょっとしたことで恋人の機嫌が悪くなった。詳しい内容は伏せるが、私の返事が気に食わなかったっぽい。想定外すぎる。どうしようもないくらい不機嫌だ。

「この肉すぐ食べて、すぐ帰って、すぐ寝る」と言っている。

終わった。
前日から準備、いや3週間前の予約の時点から準備は始まっていた。全ての準備、準備のモチベーションである愛情など全て。私のこの些細な態度で全て無駄になったのか?

まだ肉は半分残っている。見るからに良いお肉。人生で多分10回食べれたら万々歳くらい。それをすぐ食べて帰る?

しかも、どっちにしてもすぐ帰れないよ。プレート用意しちゃってるから。
ついにお肉を食べ終わり「早く帰りたい」という恋人に対して、
この期に及んでサプライズ精神があったので
「あっちょっとまだ…..ちょっと….」と今更サプライズでプレートが出てきたところで楽しい雰囲気に戻るはずがないのに、濁しながらも引き止めた。

早くプレートお願いします!!!!!!とめちゃくちゃ念を送った。

ついにプレートが来た。
店員さんが「おめでとうございます〜」と静かな声でサラリと運んできてくれた。
まず、良かった。ここがちょっとでも元気なタイプのお店で、お店全体が祝福の雰囲気になるようだったら本当に辛すぎて、ダッシュで体力が果てるまで店から離れてぶっ倒れていた。スタイリッシュなお店を予約して本当に良かった。
店員さんもサラリと持ってきてくれたけど、あんなに雰囲気の終わっているテーブルに持っていくのは気が引けたと思う。

とても素敵なプレートだった。木のお皿に3種類ほどのチョコケーキが載っていておしゃれな盛り付けで、チョコレートで名前とHappy Birthdayと綺麗に描かれていた。キャンドルも置いてあった。ワンダフル。

恋人は、喜んでいた。でも2秒前まで機嫌が悪かったためなんか変な感じだった。「流石にこれあったら帰れないね〜」と言っていた。うん。

プレートに乗っているケーキを少しずつ食べ始めた。
二人とも「美味しいね」と独り言を言っていた。

私は素敵な誕生日の締めになると思って予約したバースデープレートがこんなに最悪な思い出になるなんて思いもしなくて食べながら泣いてしまった。嬉し泣きじゃなくて惨め泣きである。最近はこんな涙ばっかり流している。恋人がなんで泣いてるの?理由言わないとわかんないよ、と言うのでなんで分かんないんだよ!と大声を出しそうになったが、
「ケーキが美味しすぎて」とかいうクソつまんない訳のわからない返事をしたら、恋人がまた不機嫌になりかけたので、正直に「こんなことになると思わなくてショックだった」と言った。その後恋人は別になんも言ってなかったけど、伝えたらどうでも良くなって、吹っ切れた。そこからはちょっと明るく振る舞えた。

お会計はとんでもなく高かったけど、カードをカッコよく出せた。
レシートがなくて、ワインの値段とかプレートの値段とか全然分かんなくて、何がお会計を跳ね上げさせたのか分からないけど、行きたいお店行けたからいいや。途中までは楽しかったからいいや。なんかすごそうなワイン飲めたからいいや。となんとか高いお金を出した理由をつらつら考えていた。恋人が最後まで喜んでくれてたなら、その理由だけで十分だったけどね。

こんなことがあってから、バースデープレートを見ると少しナーバスになる。
アルバイトでバースデープレートを出すことがあったが、泣きそうになった。
なんでこんな風に祝えなかったんだろう。いいな。

喜んで踊ってくれそうな友達にバースデープレートサプライズして上書きしたい。死ぬまでバースデープレートの呪縛に縛られたくない。

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