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2019年に見つけた個人的に素敵だと思う企業のSDGs取り組み事例5選(海外編)

前回、個人的に素敵だと思う企業のSDGs取り組み事例国内編をご紹介しました。

更新が遅くなってしまいましたが、今回は海外編です。

SDGsに戦略的に取り組む諸外国・グローバル企業

日本では昨年2019年から企業の中でのSDGsが注目されるようになり、SDGsに取り組む部署を設置したりと、取り組みが本格化してきました。

ところが世界ではSDGsが採択された2015年のわずか翌年、2016年には早速SDGsへの取り組みを発表している企業も多くありました。

例えば、スウェーデンの通信機器メーカーのエリクソンは2016年3月に発行した「Ericsson Sustainability and Corporate Responsibility Report2015」の中でSDGsの各ゴールのアンバサダーに社内の上級役職者を任命しています。トップダウンの取り組みがSDGs策定からわずか半年で実施されているスピード感はさすがとしか言いようがありません。

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出典:Ericsson Sustainability and Corporate Responsibility Report2015

2015-6年当時にSDGsの理解や社内への周知を進めていた海外では、現在では更に進んだ動きも生まれています。

SDGs達成度ランキング1位(2019年度)のデンマークにあるコペンハーゲン大学のキャサリン・リチャードソン教授は、SDGsの17のゴールを3つのグループに分け、科学技術、経済、集団での行動等といった項目が含まれる「グループ3」を、変化をもたらす企業が果たすべきゴールと位置づけています。

グループ1:人類に関わるゴール
1.貧困をなくそう
2.飢饉をゼロに
3.全ての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
グループ2:地球環境に関わるゴール
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
グループ3:変化をもたらすためのゴール
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

このようにSDGsの解釈も更に進化し、企業としてどのように取り組むかについても着実に議論が進んでいるのが海外のSDGsの今です。

それでは、今回もSDGsに取り組む企業の具体的な事例を5つ見ていきましょう。選定基準は下記の通りです。

1. 活動のユニークさ
2. 活動を通じたインパクト(事業成長 / 社会への貢献 / ステークホルダーとの連携強化など )
3. 自社以外のパートナーと連携をしていること(SDGs17番のパートナーシップの推進を実践しているか)、または自社の事業を通じて他のステークホルダーに影響を与えていること 

*各事例の該当SDGs目標は筆者が独断で記載しております。


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1、[目標:9,14,17] アディダス x PARLEY FOR THE OCEANS

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出典:ADIDAS X PARLEY COLLECTION

現在、世界的に問題になっているプラスチックごみ。日本でも大阪湾のプラスチックごみを調査したところ、少なくともレジ袋約300万枚、ビニール片約610万枚が海底に沈んでいるとの推計結果も出ており、私たちの生活にもいよいよ影響がで始めるのではないかというところまで来ています。

プラごみ問題に対応するため、日本でもレジ袋有料化が今年からいよいよスタートしようとしているところですが、かなり前からこの問題に取り組んできた企業があります。

アディダスは、2015年4月から海洋環境保護団体「Parley for the Oceans」と連携して、海洋廃棄物や違法に設置された漁網から回収し再利用した糸と繊維で作ったランニングシューズを開発しています。

2019年だけで、海のプラスチック廃棄物をアップサイクルした素材を使ったシューズの製造は1100万足にのぼっています。

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出典:アディダス公式HP「創造力 VS プラスチック」

連携のきっかけもユニークです。当時のアディダスのサステナビリティ担当部長が国際会議に出席した際に、たまたま隣の席に座っていたのが当時のPARLEY FOR THE OCEANSの代表。そこから意気投合して、今日に至るまでの大掛かりな連携が生まれたと言うのです。どこにコラボレーションのチャンスが落ちているかは本当にわかりません。

アディダスはその他にも様々な取り組みをしています。

・店頭からプラスチックバッグを排除し、商品を紙袋に入れる
・世界中のオフィスでプラスチックの使い捨てを禁止
・従業員やアスリート、コミュニティにプラスチックに対するアクションに参加してもらうよう教育し、奨励

上の事例の中でも、アディダス毎年恒例のイベント「Run For the Oceans(RFTO)」では、期間中にランニングアプリ「Runtastic」内のチャレンジに参加をすると、1km走るごとに1ドルを若い世代がプラスチック問題や海の現状、自然について学べるプログラムを提供する「PARLEY OCEAN SCHOOL PROGRAM」に寄付されます。2019年には世界で150万ドル(約1.6億円)の寄付がされました。

日本でもランニングのイベントは実施されているので、2020年は私も参加してみようと思います!


2、[目標:9,14,17] Fortum x Spinnova

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出典:AXIS

昨年見つけて、一番面白いなと思ったのがフィンランドの電力会社 フォータム(Fortum)の取り組みです。

Fortumは、同じフィンランドを拠点とするサステナブルな繊維メーカースタートアップSpinnovaと共同で、世界で初めて農業廃棄物である、麦わらをベースにした衣類の試作品を完成させました。

試作品はカナダ・バンクーバーで開催された「Textile Exchange Sustainability Conference」において公開され、ニットTシャツのほか、オーガニックコットンも使ったジャケットとスカートなども展示されました。

麦わら

出典:Knitting views

Fortumはバイオマス発電を手がけており、その中で農業廃棄物の他産業への可能性を検討していたところ、麦わらという材料に行き着き、今回の開発に至っています。

また、今回発表された衣服は、製品やサービスに対する環境影響評価の手法「ライフサイクルアセスメント」によって検証が行われ、原料抽出や加工、製造における環境への影響が極めて小さいことも確認されています。

FortumとSpinnovaの2社は、Fortumが将来建設を予定しているバイオリファイナリー(バイオマスを原料にバイオ燃料や樹脂などを製造する施設)において、農業廃棄物などを使用して持続可能な繊維生産を行うことを計画しているため、今後の展開が楽しみです。SDGsを起点とした新規事業の参考になりそうです。

3、[目標:12,15,17] Paboco X Carlsberg、コカ・コーラ、ロレアル等

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出典:CNN

飲料メーカーによる脱プラの動きは昨年沢山報道されていました。日本では、スターバックスによる紙ストローの導入が特に注目を集めていたように思います。

世界では、2019年10月にデンマークのビール大手カールスバーグが、木質繊維を使ったリサイクル可能なビール容器の試作品を発表しています。ただし、カールスバーグは2015年から新しい容器の開発に着手しており、実用化までには少なくともあと数年はかかる見通しだそうです。

カールスバーグの試みの裏には2つの企業が立ち上げたPabocoという存在があります。スウェーデンのパッケージング企業Billerudkorsnäsと、オーストリアのプラスチック包装材製造企業Alplaは2015年からカールスバーグと紙製ボトルの開発のために協働をしてきており、2019年10月に紙製ボトル開発合弁会社Pabocoの立ち上げを発表しました。

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出典:Paboco

Pabocoは立ち上げと同時に、幅広い関係企業と協働するコミュニティも発足しました。かねてから協働していたカールスバーグに加え、ロレアル、コカ・コーラ、ペルノ・リカール、Teknos等、世界的なブランドがこぞって参加しています。

参画企業の1社であるロレアルは、紙製ボトルコミュニティで作られるボトルを2021年に市場導入できるよう進める旨を発表しています。

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出典:ロレアル公式HP

さらに、紙製ボトルの導入に先駆けて、紙製チューブをリリースするようです。こちらは2020年4月までのテスト販売後、2020年中の市場導入を目指しているようです。

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出典:ロレアル公式HP

紙製の容器の開発は、製品の品質をプラスチック容器同様に保つために様々な改善が必要なため時間がかかりそうですが、Pabocoが業界を超えた企業のコミュニティを作ることで、紙製ボトルの課題などを解決し、スピーディーに色々な企業で導入されるようになることを期待しています!

4、[目標:12,15,17] LUSH X Sumatran Orangutan Society

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出典:LUSH公式HP

ハンドメイド化粧品・バス用品メーカーのLUSHは、現在日本でも問題になりつつある、「パーム油」に包括的なアプローチで取り組んでいる点がユニークで先進的です。

食品・食器・洗剤など、私たちの暮らしの中でも沢山使われている「パーム油」の需要が世界的に高まる中で、パーム油の唯一の生産地域である熱帯地域では、森林破壊や火災、野生動物の住処の減少が引き起こされています。(パーム油の問題についてはWWFの記事がわかりやすいので、ぜひ読んでみて下さい。)

そんな中でLUSHは、2008年より自社のサプライチェーンからパーム油を取り除く活動を始めており、石ケン素地のパーム油不使用を実現しています。今も新たな原材料調達の際にはパーム油不使用のものを採用するほか、代替法を模索し続けています。

上記の活動に加え、2017年からは「#SOSsumatra キャンペーン」を開始しています。


#SOSsumatraキャンペーンでは 、日本を含むアジア・オセアニア地域の9つの国と地域における全店舗およびオンラインショップで、スマトラ島に生息するオランウータンの数に値する合計14,600個のチャリティ商品「オランウータン ソープ」を販売しています。

商品の売り上げの全額を使い、スマトラ島に位置し、パームプランテーションとして使われていた50ヘクタール(東京ドーム約10個分)の土地をパートナー団体のSumatran Orangutan Society (SOS)を通じて追加購入し、オランウータンの住処である森林を再生させることで、絶滅の危機に貧するオランウータンなどの野生生物の保全につなげています。

LUSHはこの取り組みを2017年から継続して実施しており、また英国の環境保護団体とパートナーシップを組んで実際現地の森林保全活動にLUSH社員も派遣しています。

キャンペーンを実施することで、LUSHの長年に渡って取り組んできたパーム油不使用の活動をPRできるだけでなく、チャリティ商品を販売することで、社会課題(パーム油問題)について顧客や従業員が考えるきっかけを提供している点が様々なステークホルダーにアプローチできる企業の強みを生かした取り組みとして素晴らしいと思います。

最近では、オーストラリア森林火災で被災した野生動物救援などのために、限定チャリティ商品を販売しています。世界で起きた課題に一般の人が「何かしたい」と思った時のアクションの方法を提示するLUSHからは、顧客とともに課題に向き合い取り組もうとする姿勢を強く感じます。


5、[目標:9,12,17] H&M Global Change Award

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出典:H&M プレスリリースより

最後はスウェーデン発のファストファッションブランドH&Mです。

前回の記事でも取り上げた「フードロス」に並んで、「衣服ロス」も実は深刻な課題として注目が高まっています。

つい先日のガイアの夜明けでも特集されていた通り、日本では1年間で29億着の衣服が供給されていますが、半分以上の15億着が売れ残っているといわれています。

世界のアパレル企業も同じ問題を抱えており、実際に今回取り上げるH&Mも2017年に毎年12万トンの売れ残り衣類を焼却処分されていることが報道されてしまいました。

H&Mは前述の状況も踏まえ、衣服ロス問題に取り組むために様々な活動に取り組んでいます。H&M財団が主催する「Global Change Award」はその内の一大プロジェクトです。

Gllobal Change Awardでは、循環型の廃棄物を出さないファッション業界への移行を促進するようなイノベーションアイデアを募集し、毎年選ばれた5組の発明チームには、総額100万ユーロ(1億2000万円相当)の資金援助だけでなく、H&M Foundationがアクセンチュアとスウェーデン王立工科大学(KTH)と協力して提供する1年間のイノベーション促進プログラムを提供するなど、非常に手厚いサポートをしています。

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参照:H&Mプレスリリース

プログラムは年々進化し、第4回のGlobal Change Awardではクラウドファンディングプラットフォームの「Indiegogo」と協業し、一般の人が受賞した5団体の取り組みへ直接支援をできる環境も実現されました

日本からは、生地の廃棄ロスを削減するためのパターンメイキングシステム「アルゴリズミック・クチュール」を開発するSynfluxが2019年にAward創設以来初めて受賞するなど、今後日本でも注目度が高まりそうな取り組みです。

サステナブルなファッションを実現するために、自社以外の知見を集め、自社の技術・ネットワーク・資金を用いて活用するこの手法が様々な企業に広がれば、数年後に大きな変化が生まれのでは、、と言う期待をしています!

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以上、海外の企業事例5選でした。2020年2月が終わりかけており、古い情報も一部ありますが、少しでもみなさまの参考になれば幸いです。

おまけ

私が現在働いているREADYFORでは、今週、ピアボーナスサービスを提供するUniposさまと連携し、従業員のみなさまが企業が掲げるSDGsのゴールに取り組む団体に寄付ができる「SDGsプラン」の開始を発表させていただきました。

この記事で紹介したような海外の企業のSDGsへの取り組みを実際に日本でも広げていくには、一人でも多くの企業で働く従業員が、SDGsを知り、自社でできることは何か、外部と連携をして何ができるかを真剣に考えていく必要があると思っています。

ぜひ、記事をご覧いただき取り組みについて知っていただけると嬉しいです!





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