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記憶に呼びかける香りと音楽

ココナッツの香りをかぐと、オーストラリアで出会ったホストマザーを思い出します。

彼女からココナッツの匂いがしていたのか、彼女が作った料理に使われたココナッツオイルが私の記憶に刻まれてるのかは定かではありません。

むんとした熱帯の空気の匂いは、バリ島に旅行で行ったときに降り立った空港を、

金木犀の甘い香りは、幼少期に保育園まで通っていた地元の道を、

独特なナンプラーの匂いは、街中に屋台が並ぶタイに行った時のことを思い出します。

それらを嗅いでから頭で記憶を辿っていくのではなくて、直接脳裏に香りが突き抜けていったその衝動で遠い日の記憶がふっと出てくるのです。

匂いが記憶の奥底に眠っている何かを呼び起こすように、私にはその土地を思い出す音楽があります。

その時聴いていた音楽はその当時の自分の心境を映しているのでしょう。

当時抱えていた悩み事が歌われています。

好きだったもの、一緒に居た人達が音楽の中でまた寄り添ってくれます。

物理的に遠い場所でも、その音楽がイヤホンから流れてくるだけでその場所にいま向かっているような感覚に陥るのです。

旅好きの私に友人の一人が、本と一緒に旅をすることを勧めてくれたことがあります。

移動中の時間をつぶせるだけでなく、家に帰ったあともその本を手に取ると旅の記憶が蘇るので。

どこかの美術館のチケットも本に挟んで栞にしたら、直ぐにゴミ箱に捨ててしまったり、引き出しにしまっておくより、そのチケットもずっと喜んでくれるでしょう。

私はその友人が私に教えてくれた様に、旅をするときは音楽を聴くことをお勧めします。

別に特別な音楽でなくていいです。旅するその土地に関わるような音楽だったらもっと簡単に旅のことを思い出すことができるかもしれないけど、そうじゃなくて。

自分の思うように音楽を聴いたらいいと思います。

そしたら、その旅中自分がどんなことを考えていたか、後から振り返りやすくなるから。

私は海外に居る時の方が、衝動的に邦楽を聞いたりします。

いまの流行りの邦楽は聞かないけど、宇多田ヒカルとかPUFFYとか。はたまた松任谷由実だったりスタジオジブリの曲。

20代前半の私がひと世代前の曲を聴くのは、私がまだ小さいときに家族で行ったスキー旅行の車内で流れてた曲だったり、テレビから流れてきたヒット曲を思い出しているからなんでしょう。

きっと知らないうちに日本が恋しくて、昔の日本を思い出させる曲を聴くんでしょうね。

アイルランドを出てからこの地を思い出す音楽はきっとTom Misch。

初めて海外でライブに出かけて、生で彼の演奏する姿を見て、彼の感性にインスパイアされたであろうオシャレな人たちを見て、ますます好きになったアーティストです。

きっと彼の曲を聴くとダブリンが脳裏に浮かぶのだと思います。

“You have to do this because you love it
And it doesn't matter if you broke, you still gon' do it”

これは、彼のBefore Parisという曲の冒頭でのスピーチの中の一文。

さて、次に行く場所では私はどんな音楽を聴くのでしょうか。


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