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【つながった海の先で】

海の色や波の気質は、土地によってさまざまだ。透明度だけではなく、砂色によっても海面の色は変化する。黒い砂なら濃緑に、白い砂ならエメラルドグリーンに。水そのものは無色透明なはずなのに、周囲の環境により外側からの見え方が異なる。岩を削る荒ぶる波も、湖のように凪いだ海も、それぞれの良さがある。私の故郷の海は、どちらかというと荒い海だった。テトラポットに押し寄せては水面が砕ける様を、いつもじっと眺めていた。その白い泡を見るたび、人魚姫の童話を思い出していた。人を愛しただけなのに、泡になって消えてしまうお姫様。物語の世界も、現実と同じくらい理不尽なものであふれている。同じくらい美しい幸福も、また然り。

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少し深めのエッセイ。創作にまつわるエピソード。時々、小説。 海の傍で生きてきた私のなかにある、たくさんの“いろ”と“ことば”たち。より自…

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