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【春を食べる】

気温が上がってきたと思ったら雨続きで、青空と桜のコントラストを今年はまだ見られずにいる。写真家の友人は、「植物は曇りの日に撮影すると光線の加減が自然に仕上がる」と言った。友人が撮る桜の写真は、端正で美しい。彼女を真似て、薄曇りの空の下、満開の桜にレンズを向けた。切り取った桜は、どことなく悲しげだった。天気のせいか、私の心模様のせいか、どちらかはわからない。

春が好きだ。その理由の大半を桜が占めている。人混みは苦手だが、お花見に集まる人を見るのは好きだ。どことなく皆浮かれていて、口元を緩めながら桜を見上げている。そこに漂う空気感は淡いパステルカラーのようで、その色合いを眺めていると不思議と心が満たされる。

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