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新型コロナ、ミャンマーで悲惨な状況

noteにミャンマーの新型コロナのことを書いたのは2週間ほど前だった。それから、日に日に悪化して大変な事態になってきた。私の周りでも多くの人たちが感染し、亡くなった方もいる。また、近所でも3人の方が亡くなった。

実際の数字は?

保健スポーツ省が公式に発表している数字がこちらだ。

日付 検査数 感染者 死亡 
7/11 10,117 3,461  82
7/12 14,432 9,014  89
7/13 11,686 4,047 109
7/14 21,352 7,083 145
7/15 11,044 4,188 165
https://mohs.gov.mm/Main/content/new/list?pagenumber=1&pagesize=9

これらは、Covid-19センターおよび公立・軍病院が把握した数字だ。ところが、コロナの症状が出ている多くの人たちは病院に入院できず、自宅で療養する(といっても何もできないが)。この人たちは公式発表の数字には含まれていない。彼らは呼吸困難になっても病院は満室で受け入れてもらえない。家族は酸素ボンベを求めて街中を探し回るが手に入れるのは難しく、そのまま自宅で亡くなってしまう。彼らは死亡した後に検死もされず火葬場で焼かれる。結局、本当に新型コロナの感染者だったのかどうか正確なことがわからずこの世から消える。

また、自宅療養のために一家全員が感染してしまうケースが非常に多い。実際に私の親しい友人の実家は、一家8人が全員感染してしまい、両親とも亡くなってしまった。

イラワジの記事によると、13日にヤンゴンの火葬場で731人の遺体を火葬したという。しかし、新型コロナ以前の火葬は100人ほどだと思われる。
https://www.irrawaddy.com/news/burma/myanmar-junta-accused-of-restricting-oxygen-supplies.html

ということは、630人ほどの超過死亡が出ていることになる。この日の保健スポーツ省によるヤンゴンでの新型コロナの死者は40人だ。単純計算で16倍になる。少なめに見積もって10倍として計算すると、7月13日のミャンマー全体の感染者数は4万人あまり、死者は千人ほどになる。これは、人口で5倍のインドネシアの感染者と死者の数字とほぼ同じだ。新型コロナが非常に深刻と言われているインドネシアよりミャンマーは人口あたり5倍も多いということになる。

注)超過死亡の数値を一部変更(2021年10月18日)

防疫体制の崩壊

なぜミャンマーでこれほど新型コロナの感染が広がったか。根本原因はただひとつ、軍のクーデターだ。

元々、人口比で日本の1/4程度しか医師がいないミャンマーだが、医師や看護師、その他の医療スタッフの献身的な努力で今までコロナと戦っていた。また、国民同士で助け合おうということで多くのボランティア団体が生まれ、防疫体制のサポートを行った。また、個人や企業からの寄付も多く、隔離施設などもそれなりに充実していた。

ところが、クーデター以降は多くの医師がCDM(市民不服従運動)で国立病院を辞めた。ボランティアに参加している人たちは元々社会意識が高い人たちだ。すぐに軍と闘う団体に変わってしまった。そして、寄付をする人はいなくなった。こうして、ミャンマーの新型コロナの防疫体制が崩壊してしまったのだ。

地域自治も変わってしまった。以前はロックダウンになると選挙で選ばれた区長(ヤックエオーチョーイェムー)と地区の住民が協力して地区の出入り口にゲートを作り、出入りする人や車を住民たちでチェックしていた。ところが、クーデター後に軍は区長のクビを軍の言いなりになる人間にすげ替えた。区長は住民の憎悪の対象となり、誰も協力しなくなった。今はロックダウンしても地区の出入り口をチェックする人間は一人もいない。

今ごろになって、新型コロナの増加に軍が対処できていないことを認めた。そして、医師や看護師を契約ベースで雇いたいと言い出したのだ。また、ボランティアも募集するとも言っている。今まで自分たちが殺したり逮捕してきた人たちに手伝ってほしいと言っているのだ。

酸素が足りない

自宅で呼吸困難になった人は酸素吸入を行うしかない。しかし、ミャンマー全土で酸素が非常に不足している。ヤンゴン市内には何箇所か酸素を充填してくれる工場があり、多くの人たちが酸素を求めて殺到している。

しかし、軍は民間には売らないようにという命令したという情報がある。実際、酸素を求めている人たちの列に軍は威嚇射撃を行って人々を追い払ったり、酸素ボンベを持っている人たちに向かって発砲したという事件もある。

それでも、いくつかのボランティア団体はどこからか酸素ボンベを確保して必要な人々に配っている。

自分の身は自分で守る

現在でも危機的な状況のミャンマーだが、来週、再来週になるともっと悲惨なことになる可能性が大きい。こうなれば、自分の身は自分で守らなければいけない。

以前、コロナの治療および予防として効果があると言われているイベルメクチンを購入した。これを予防薬として飲んでいる。このイベルメクチン、今はどこの店からも姿を消してしまった。前に余分に買ったので、いくつかは友人に分けたりしている。

血中酸素濃度を測定するパルスオキシメーターも買った。酸素濃度が下がると酸素吸入が必要となる。このパルスオキシメーターも売り切れの店が増えてきた。

昨日は食料の買い出しということで、スーパー(シティーマート)に行ってきた。米やスパゲティーや缶詰やインスタントラーメンなど、日持ちのする食品を多く買った。1ヶ月は籠城する覚悟が必要だ。この先、運送や電気・通信などライフラインにも影響がでてくるかもしれない。

在留日本人

4月12日の時点で、21人が新型コロナに感染したという情報がある。これは日本大使館が把握している数字だ。また、1名がヤンゴンの病院に入院している。ただし、コロナに感染しても大使館に届け出を出していない日本人がいるので、実際には21人よりも多いはずだ。ミャンマーに滞在している日本人は、正確な数字ではないが、600〜700人くらだと思われる。

日本へ帰国できる航空便として、8月6日にヤンゴン発成田行きのANA直行便がある。昨日(7月15日)時点で残席があったので予約が可能だ。

シンガポールは7月16日からミャンマー滞在歴のある乗客は入国も乗り換えも禁止になった。これで、シンガポール経由で日本に帰国するというルートはなくなった。韓国・仁川経由便とマレーシア・クアラルンプール経由便は今のところ(7月16日)飛んでいる。

ところで、7月13日に日本大使館から在留邦人向けに届いたメールがある。タイトルは、「新型コロナウイルス感染症(一時帰国の可能性の検討の推奨)」だ。

在留邦人の皆様におかれては、上記の状況を踏まえ、当地において真に必要かつ急を要する用務等がない場合には、一時帰国の可能性を検討されることをお勧めします。

回りくどい文章だが、「早くミャンマーを離れたほうがいい」と言っている。

これからのミャンマー

このまま軍の支配が変わらない限り、ミャンマーは大変な事態に突入してしまう。これは、新型コロナに対して国が何も対処しないとどうなるという実験とも言える。どういう結果になるか、考えるだけでも恐ろしい。

しかし、違うシナリオも考えられる。コロナという国民にとっても軍にとっても共通の敵が現れた。軍と国民が一時停戦し、共同でコロナに立ち向かうことができるかもしれない。

最後に、軍がコロナによって自壊してしまうかもしれないという、かすかな希望を私は持っている。

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