榛野ゐと

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詩『火傷』

丸裸の電球が嘔吐した光を 一点に掻き集めて さうして食べてしまおう 口の中の火傷はきつと 腦髄まで擴がつて 明日の午後には あの星ゝに届いてゐるだらうか?

    • 詩『あの花は何処…』

      去り行くあなたは まるで雪のやう その身溶けるとも 決して消えぬその気高さ 空も見惚れて 青さを忘れるその靜謐さ されどあなたは 一輪の花 この手で抱いても 溶けはせぬけれど 失せる悲しみは 雪と等しく 決して忘れることは 無いでせう あなた亡き今 愛を求めて蜜蜂は 色無き空を虚しく飛ぶ

      • 詩『きらめき』

        凍てついた焔は 物憂げな睫毛を掠め 青褪めた瞳は ちかちかと耀う 過剩な襞飾りと 強迫的な媚態 燦々とした寶石類は 劈く悲鳴のやう 一頻り樂しんで 私はまた旅立つだらう 小さな潛水艦の中 仄暗い海の底 太陽と夜が サアカスした

        • 詩『黒猫の哲学』

          世を儚む桜の木の下 大きな疑問符を高々と掲げて 黒猫が一匹、鳴いた。 「やい永遠の刹那主義者。  お前はまたそうやって  勝手に散って逝くのかい!  まあ悪かねえだろうさ、  何も持たずに  老いさらばえるのも。  簡単さ、何も持たずに生きるのは。  問題はいつだって、  一度手に入れたそれを捨てる方法だよ。  やい永遠の刹那主義者。  お前にゃどうせわからんさ!」 その様子を見て老夫婦、 雲ひとつない空の下 幸せそうに微笑んだとさ。

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        詩『火傷』

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        • 47本

        記事

          詩『青春』

          銀の魚群の 舞よりも 雄辯に 物語る 海の底で 燻る蝋燭 其れでも春は やつてくる 花の幻 投影し 昂る光の 夢を追ひ 轉がる瓶を 蹴飛ばす兵士 其れでも春は やつてくる 割れた硝子で 滿たされた 雲ひとつない 伽藍堂 鷲の眼の中 眠る青 其れでも春は やつてくる

          詩『青春』

          詩『空腹』

          深海のごと宙のごと 思慮によつてのみ見える悪魔 罪に群がる薜茘多ども 腹を空かせた蒼穹で 溢れ却つて仕舞へばいい いつかあなたが振り撒いた 罵詈雑言のやうに ただ迸る快楽のやうに 葡萄酒の雨降らし 空は星を喰らい尽くす!

          詩『空腹』

          詩『狼煙』

          肌を濡らす微温湯 失はれた蓋然性 愛煙家の口遊む 叫びにも似た子守唄 太陽もあの人も ソッポを向ひた儘 溶け合ひ交はる 搖蕩う煙と探照燈

          詩『狼煙』

          詩『薔薇のある庭』

          色褪せた庭に 一枚の鏡と二つの記憶 壞れたベンチと 蔦の絡んだガゼボ あの人のお氣に入りだつた 薔薇は年老いて 力なく俯くばかり あゝ確かに あの人はここに居たのだと 枯れゆく魂は 生温い風と 埃と共に舞ふ

          詩『薔薇のある庭』

          詩『郷愁』

          萬里の旅に疲れ果て 飛べぬ鳥はただ歎く 天は涙を顧みず 冷たい雨を撒き散らす 凍える身體に染み渡る 瞼裏のまほろばよ 遠き國のイメエジよ 虹の線路は山を越え 可哀想な鳥を乗せ 黒い列車が走り去り 轟く汽笛は問ひ掛ける 行き先は何處 行き先は何處…

          詩『郷愁』

          詩『蝶と獸』

          血の螺旋を憎む 獸と憐憫の蝶 "私は牙を剥く" 獸は涙し 蝶は笑ふ 惡の尤も慘い その心たるや "私は美しい" 蝶は笑ひ そして獸は鳴く

          詩『蝶と獸』

          詩『暴動』

          散り落ちた木の葉が 足下で暴れる 我々の耳には ノイズが混じる まるで死を悟つた 馬のやうだ 馬のやうだ…… 血の砂を撒き散らし 時に人を傷つけ 我々の目は 無感動を見つめる まるで笑つてゐる 群衆のやうだ 群衆のやうだ……

          詩『暴動』

          詩『超越』

          あゝ、毀れたヌミノーゼ その瀆聖を以て 時が流した血の涙を 一滴たりとて殘さずに 汚れてしまつた掌に掬はう 矛でもなく盾でもなく ただひとつのパラドクスが おまへの手となり足となり 不能の賽を狂はせて 飛べぬ鳥の美しき似姿を 永遠に描き續けるだらう

          詩『超越』

          詩『踊り子』

          脚光なき舞臺の上 空飛ぶ踊り子の 大きく開いた脚の隙間には 嗚呼、夜、夜だ 星坐の證を弄び 尚も空を驅ける 眞紅の踊り子の 其の手が透かす 宙に舞ふ一片の羽は 月光と共に滑り落ち 澱んだ水面にて 踊り子の諦念を笑ふ

          詩『踊り子』

          詩『修羅』

          恐怖に震える 修羅は嘆き カールした睫毛と 白い鎖骨が 箒星を攫う ロックと憂い 武者震い アドレナリンの発作は 絶頂というよりも 笑いに近い ビブラートする 横隔膜は 快感の海を揺蕩う 砂の一粒のように 死へと還る

          詩『修羅』

          詩『ネクロポリス』

          さらばと言ふやうに あの空は去る 私は1人追ひやられ 地下墓に煌めく 赤眞珠へと 水子の唄を捧ぐ そして閃光の如き 極樂鳥の夢に 一寸の悦を求め それでも尚、孤獨だ 死して尚芳しく 華の馨る夜の空

          詩『ネクロポリス』

          詩『業風』

          傷に涙 肉には鞭を 惡鬼の鉈に 四肢をも捧げ 孤獨と苦悶の 小徑の果て 罪の味を覺えた 黒く長い舌の上 腦髄轉がす 地獄の女 束の間の永遠に 冷たい風が一吹きすれば 前轍を踏む 牛車となりて 炎の庭を 驅け巡る のたうち廻る 火花の如く

          詩『業風』