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本04 『子育ても 料理も 科学も 遊んじゃおう 暮らしのなかの学びあい』(著:曽田蕭子)

ただ「かたる」だけでいい

私は、”女子校”という女性の多い、あるいは女性の意見が優先されがちな環境で育ちました。
そのため、つい女性、に肩入れしがちな傾向があると自覚している。

もちろん、ファシリテーターとして、場に立ち、ファシリテーションをするとき、無自覚に、あるいは意図を持たずに、何かに反応し場にインパクトを与えるのは、NGなことです。ひとりひとりが、DNAが異なり、身体が異なり、育った環境が異なり、言葉が異なり、あらゆる違いをもって存在している。「女性」、「男性」などど単純な二分法だけで表されてなるものか、だ。

・・・しかしながら、暮らしの中で、つい「私は、女子校育ちだ〜!」「女はつらいんだ〜!すごいんだ〜!」と、大手を振って叫びたくなるときがあることをここに認めます(我が家では、その次に、夫が「男もつらいんだ〜!」と言い、最終的には「そもそも男と女でわけられない、それぞれ生かせることがあるし、つらいこともあるね、助け合いだわね」と沈静化。そこに至るまでは試行錯誤がありましたが、それはまた別の機会に。)

この本は、曽田蕭子さんという女性が、1960年代の枚方市で近所の女性を中心とした住民同士で立ち上がった「かたる会」の場について、彼女の人生について、書き記した文章です。「かたる会」とは、目的や目標を決めずに、ただただお互いやお互いの暮らし・生活について語る場所のこと。

10代で戦争を体験し、1960年の安保闘争を走り抜け、物理学を学んだ彼女は、同じく物理の世界に生き、思いを同じくする夫と結婚。ともに引っ越した枚方で、共同保育所「たんぽぽ」の立ち上げ、収穫を分かち合う市民農園、「かたる会」と、地域のつながりにエネルギーを注ぎ込んでいきます。どんな人物がその場に居て、どんな会話が湧き起こり、曽田さん自身がどんなことを考え感じとって生きてきたのか、臨場感たっぷりに描かれ、歯切れのよい口ぶりから筆者の生への情熱がほとばしるようだった。

この書籍を手にとったのは、昨年2019年の8月。岐阜県に友人を訪ねにいくとともに、前から行ってみたかった「百草 ギャルリももぐさ」*さんで出会いました。ちょうど言葉にまとまらないモヤモヤが積もり気鬱なタイミングでした。
ひとり多治見駅からバスに乗り、バス停で降りてさらに1キロ、誰も歩いていない坂道を不安な気持ちで進んだことをよく覚えています。やっとたどり着いた美しい民家で、この本に出会ったとき、不安な気持ちが筆者にほぐされるように、興奮して一気に読んだのだった。

冒頭は、日高六郎さんによる序文にて、曽田さんの言葉の引用で始まります。

「私は、夫や子どもたちのためにではなく、ある与えられた社会的目標のためにでもなく、もちろん組織などのためにではなく、まさしく自分のために、生き生きとした生を生きたい。もしそうできるならば、それは、夫や子どもたちや隣人がいきいきとした生を生きるためにも、きっと役立つだろう。
ーそして、そのように生きていくためには、”いま生きているこの場所をもっと生き生きさせたい。”そしてまた、そのためには、”人と人との結びつきがもっている大切さはかけがえのないものだ、ということ”に気づく」

“そうそう、そうだ、その通りだ”と、私の心が相槌をうつ。1988年、32年前の言葉とは思えないほど、みずみずしく、現代でもなおリアルに心に響く。

“あー時を超えて、「かたる」は可能なのだ”

「私は私自身の出会いの深まりのなかから、なにかがきざしてくるのを感じる。ーそのときの自分の心の動きを友達に話してみたくなる。そう、あなたのなかにきざしているのは、あの生命の芽なのだ。「小さな願い」だって、そのなかからこそ生まれる。こうしてあなたは、あなた自身を生み、人とのつながりを生むだろう。一つの微笑のなかから、一つの作業に集中するなかから、生命のおりなす宇宙を感じるだろう」

“あーそうだった、「小さな願い」。私の小さな願いは、なんだったろうか。そして、曽田さんが夫と誓った「小さな願い」のように、私と夫の「小さな願い」はなんだろう”

「いつか夫が同僚を評していっていた、“あの男”は、夫婦げんかがたりないんじゃないか?いっていることが軽薄だ”ということばだ。なるほど、夫婦げんかは相互教育でもあるのか、と思ったものだ。」

“なるほど、そうだ、その通り。夫婦げんかは思いっきりやろう” マル。

*百草さんはこちら↓
https://www.momogusa.jp/index.html

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『子育ても 料理も 科学も 遊んじゃおう 暮らしのなかの学びあい』
(著:曽田蕭子)

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