【本】自分との対話ー８２年生まれ、キム・ジヨン

ようやく、読むことができた。
話題になっていることもあって、前情報でどのような作品かは聞きかじっていたけれど、実際読んでみると、とっても思慮深い、その一字一句が、とても心に響く小説だった。
いろんなところで紹介されているので、あらすじには触れません。

82年生まれ、キム・ジヨン チョ・ナムジュ 訳 斎藤真理子

何よりも、淡々とそれまでの経緯や、そこに生まれたジヨンの思いを書き記しているように見えて、一つ一つのセクションに読者の側に「私にはなかっただろうか」「私もそうしていただろうか」と自己を顧みさせる構成になっている。
それが、とてもつらい。

自分では平気なつもり
あたりまえだから気づきさえもしてない
違和感があるけどどうしようもない
と思っていた、という事実に、読んでいる側が向き合わなければならない。
本当はおかしいと思ってるんじゃないの？だけど変えられなかっただけなんだよね？と言われているようで、自分の鈍感さや、向き合わずになんとなく居心地の悪さに慣れていたことを、優しく姿勢を正されたようだった。

現状を理解してほしい、誰かに何かを変えてほしい（特に男性に）という話ではないと思う。もちろん読んでくれる人が増えたら意識は変わると思う。
少なくとも私は、私自身を振り返って、もっと自分を認めてあげられたのはないか、社会との折り合いにもっとうまく対応できる強さが必要なのではないか（自分から現状を変えていくという意味で）と思った。

過去や、親世代や、男性を否定することで、変わる未来はない。
今客観的にふりかえることで、自分の中の当たり前の価値観を変化させていきたい。後世の女性に、今のまま渡すわけないはいかない。

映画になったときに、ただそれが、異国のドラマの中の世界というわけではなく、同じように見る人自身の、向き合わなければならないものになっていたらいいな。