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ADHD日記【療育】お前学校の先生にクソ野郎って言われたことあんのかよ!?

【お前学校の先生にクソ野郎って言われたことあんのかよ!?】

発達障害の子供達の療育の場で貴重な体験をしたので書き残しておこうと思う。

手帳に予定を赤字で書いたにもかかわらず、間違えて職場に3時間前に到着した日の出来事。

暑くて、冷房がなかなか効かない猛暑日だった。

私がお世話になっている発達療育の場は小学1年生〜中学生まで様々な個性の子がいる。

私が低学年の子供達に混じって、鬼滅の刃やNARUTOの話で盛り上がっていると、
(みんなで盛り上がるというよりは、A,B,Cの子が一斉にラジオみたいに一方的に機関銃のように話しかけてくる感じ笑)

ある子が擦り寄ってきた。私に差し伸べてきた手は赤く腫れていた。

「どうしたの…?」
ときくと、あの子にやられたと指差したのは一番高学年の男の子。友達との衝突が多く、よく喧嘩に発展しやすい一面があった。

私はつい一方的な正義感を振りかざした。
「なんでこんなに腫れさせちゃったのっ?叩いたのっ?」

少し語気がつよくなってしまい、
その子が取り乱しはじめた。

「なんで怒られなきゃならないんだよ!?だったら、そいつがやめろ!って言えばよかったじゃないか!?なんで俺が!!
俺ばっかり!!?」

普段、わざとやったならもっとこんな反応しない。なんかありそうだ。

「わかった、わかった!ごめん。キツく聞こえたかもしれないけど、怒りたいわけじゃないから。怒らないから。何があったのか知りたいんだって。」

「お前には関係ないだろ!」

「悪いがめっちゃあるんですわ。
どうして怪我しちゃったのか教えてくれない?」

「だからさっきから俺は悪くない言ってんだろ!馬鹿かよ!」

「そうだよ、馬鹿だよ。でも馬鹿のままでいたくないから知ろうとしてるんじゃん。」

よくよく、2人と現場検証してみると確かにお互いふざけ合ってたまたま怪我をしただけ。
結局、その子はわざとではなかった。

「なるほどね。ごめん、疑って。でもそらそんな遊び方したら怪我するわー。
オモチャの扱い方気をつけようよ、2人とも。」

「………はい。」

ああ、やっちゃったなー………
バツが悪い。

これこの子一日中モヤモヤ、イライラするだろうなーなんて思いながらも、また怒涛の機関銃トーク三人衆に攫われたり、やることに追われていった。

療育の方針に則って授業が進み、個別学習の時間がきてもその子はイライラし続けていた。

「あー、あらー……」

みると、その子は先生が配ったプリントをビリビリに破き、机に散らしていた。

みる影もなく舞い散るプリント。
真夏の太陽に照らされて、わぁ!綺麗!

って、それは誰が片付けるんだ…ッ

しかもそれは先生たちがみんなで話し合って君のためを思って渡したやつじゃないか………

とか脳内でモノローグがかけ巡り、またつい口に出しそうなのを堪えた。

得意科目ならやるだろう、だとかはあくまでこっちの思惑や都合であって、彼の意欲が湧かなきゃ意味ない。
どうしたらいいのかわからんっ!泣
なんならもう本人に聞くしかない。

「あれま、破いちゃったの?どうして?」

「暑いとさ…イライラすんだよ。」

「ああたしかに…今日暑いよね〜
わかるわぁ〜、たしかにイライラするわ。」

「暑い日はさ、イライラすっから、破るしかねーんだよ」

「分かった、その紙、あとで自分で捨てるならいいよ」

「分かってるよ」

なるほど。納得した。この子だってイライラしたかったんじゃない。
好きで衝動的になってるんじゃない。

ただ、暑かったんだ。自分じゃわからなかったんだ。

「そっか。ねえ、先生たちにさ、なんか手伝えることある?」

「………」

「なんでもいいよ、イライラを抑えるために手伝いたいんだよ」

「…冷房、下げてくれよ」

「わかった、みてみる。」

たしかに部屋は全然効いてなかった。
でも冷房MAX……うわぁ……

「ごめん、冷房これ以上下がらなかった……」

「なんでだよ、腹立つなー!
暑いのなんとかなんねーのかよっ!」

「ごめん、先生たちお天道様は操れなくてさー。」

「ンなこと分かってるよ!チクショー」

「いい方法考えるからさ、待ってて。
その間なんかやっといたら?集中したらマシになるときない?宿題とかないの?夏休みのさ、」

「……やる気ねー暑い」

「たしかに。でもさ、この時間席にいるしかないみたいだしさ。なんなら、せめて有効に使った方がマシじゃん」

「うるせーぇなぁあ」

「無理にやれってんじゃないよ。
ここ、そういうとこじゃないしさ。別に勉強できなくたって生きてく方法あるしね。先生たち無理矢理やれっていってないよ。」

「……」

「たださ、先生たちはさ、〇〇くんのいいとこいっぱい知っててさ、もっと色々知って、もっと毎日過ごしやすくなったらいいね。って。それだけなんだよ。」

「………」

「宿題やっちゃったらさ、後が楽じゃん?まぁ、先生も後回しばっかであんまやれなかったんだけどさー、わははっ。」

私の開き直った笑い声がムカついたのか、その子が沈黙を破り、本心を濁流のように吐露しだした。彼の顔が泣き出しそう悲痛な表情で歪み、怒りを剥き出しにした。

「……お前はさぁ、学校の先生に、
このクソ野郎!!って言われたことあんのかよ。なぁ!!クソ野郎って!!自分だけに!!あんのかよ!?」

「あるよ。スーパーある。だからここにいるんじゃん…」

反射的に返した。
ため息混じりの静かで低い音とともにそんな言葉が出てハッとした。

もうおチャラける余裕ぶった大人な振る舞いもできなかった。
そこにあるのは、共感と、ジンとするような痺れ、マジな顔。

重たく引きずるような気怠さ。寂しくて潰れそうで、弱った情けない自分。

それが私の本音であり、また彼との共通点でもあった。

彼の前に草臥れてしゃがみ込んだ。本当は子供達の前では絶対みせたくなかった弱い部分。

「やることやらなかったら勘違いされたよ…よくね。分かってること一々言われたの。すげームカついた。
残念ながら大人になってもね、同じ。大変なんすよ…やることやらなかったらさ、言われやすいのよ。大人だって。先生それすげー嫌だ。」

私の疲れた表情にその子が戸惑った。

「だからさ、すげーわかるのよ…けどね、逆にさ?やることやったら勘違いも減ってきたりもしたのよ。
先生たちはさ、〇〇君はクソ野郎なんかじゃない。って、ほんとは優しくて頭いいって、そんな子じゃないって知ってる。」

「おれさ、ほんとは怒りたくねーんだよ…」

「わかるよ。先生だってムシャクシャするよ。帰ってから座布団振り回したりとかさ笑笑
最近あんまなくなってきたけどさ、だから手伝いたいんだよ。」

「……おれ、学校嫌いなんだよ」

「私もそうだった。じゃあここは?ここはどういう場なの?」

「………安心、できる場所」

普段から想像もつかない、ポツリと消え入りそうな声だった。

あ、そんな風に思ってくれてたんだ。ブワッと沸き上がる気持ちを抑えるために目を逸らすと冷蔵庫があった。

…あ。

「うあ!あるじゃん!!冷やすやつ!」

冷凍庫からさっき、手を腫らした子に渡した保冷剤を取り出してペーパーに包み彼に渡した。

「……ありがとう。」

彼はそう言って散り散りになったプリントをまとめてゴミ箱に捨てた。

「……ほら、おれ、捨てるって言ったら捨てるやつなんだよ。」

照れくさそうに言った彼は、また席についた。

始終みてた先生が新しいプリントを渡してみたら黙々とやりはじめた。

掃除の時間、低学年の子たちがはしゃぎまくって何もしないなか、彼はホウキをもって近づいてきた。

「おれさ、大人が大変ってちょっとわかったかもしんねー。みんな全然やらねーもんな」

ブツクサ言いながら、ホウキではいてた。

彼のおかげで気づいたことがたくさんある。

怒りたくて怒ってる人なんていない。
必ず理由があって、本当はどうにかしたくて。

そして、私自身がどうしてそんな子に関わりたいのか。改めて知った気がする。

先生、なんかじゃない。
偉そうに言ったって響きゃしない。
学校、キライ。先生、キライ。
でも先生だって完璧じゃない。

私だってその子だって生身な人間同士だ。

カッコつけてないで、もっと素直に。
オープンになれたら。

表現に通ずるとこがある。

似たもの同士、ちょっとずつ
お互いに、生きやすくなっていけたら。


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