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宇宙に命はあるのか(読書メモ#03)

モンテッソーリ・メソッドにおける情報伝達は、まず全体像を見せ、それから細部に入っていくというやり方をとっている。生命について教える時には、ビックバンから始まる宇宙の成り立ちを話し、太陽系のことを話し、初めての生命について話す。地球46億年の歴史において環境がどのように変化し、生き物はどのように進化し、我々人間が登場したのはいつのことなのかなど順を追って話していく。

日々過ごしている地球環境は決して「あたりまえ」にそこに存在しているのではない。自分と環境との関わりに気がついた子供たちは、それまでとは違う見方で動物や植物を見つめるようになっていく。

私は職業柄、こうした事柄を日常的に意識している。先週末には、小学生を大勢つれて神奈川県立生命の星・地球博物館に行ってきたばかりだ。小田原よりさらに奥の入生田という都内からはやや遠い場所にあるのだが、ほとんどの展示物に触って良い、という点が子供には魅力だ。隕石や波が削った跡が残る岩石、水晶や翡翠の原石など触りたい放題。実物に触れる体験というのは何にも勝る学びの機会であり、子供たちにとっては宇宙に思いをはせる「ワクワク、ドキドキ」の楽しみなのだ。

宇宙に命はあるのか〜人類が旅した一億千分の八」はこの「ワクワク、ドキドキ」がたくさん詰まった本だ。NASAの中核研究機関であるJPLで火星探査ロボットの開発をリードしている気鋭の日本人、小野雅祐氏が著したもので、科学者の視点から宇宙開発の歴史が語られる。いかにして「宇宙への旅」という人類の夢を実現することができたのか。どんな人がどんな風にして情熱を傾けたのか。誰もやったことのないことを成し遂げるにはどんな努力が必要だったのか、などが圧倒的な文章力で語られる。読んでいる間には、常に頭に映像が浮かぶ。まるで映画を見ているようだ。

それぞれの惑星がどんな特徴を持っていて、生き物が住める環境なのか否か。宇宙開発の最前線が詳しく書かれていて、常に子供から質問を受ける教師の立場としてもありがたい情報が満載である。質問と言っても、全てに答えられる必要はない。宇宙に関しては、はっきり言って教師なんかより子供たちの方がよっぽど詳しいのだ。探査機や、スペースシャトルの名前を全て覚えている宇宙オタクの子もいる。そんな子達の言っていることがだいたい理解できて、わからないことを一緒に調べられるくらいの好奇心があればいい。この本を読めば、子供達と同じように宇宙について「もっと知りたい!」と願う宇宙ファンの一人になれるのだ。


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