星を見つめ、星を捕まえる。【シロクマ文芸部|企画「流れ星」】参加記事
貼付記事以下、参ります。
流れ星と呼ぶには、その光景はいささか大きすぎるものだった。見上げた夜空に浮かぶのは天の川銀河。それを見つめ続けるひとりの画家は、大きな窓をキャンバスに見立てて、何もない空気の上に彼女の星々を描き出した。
「...…という始まりはどうかな、と思ってさ。この間、直美がAI画像を生成しただろう?あれに短文をつけてみたんだ。ちょっと読んでみてくれないか」
雅也はそういって、タブレットに文章を表示した。液晶に映し出された物語は、続きを私に語りかけてくる。
人は世界を創り出すことはできない。雨も降らせられなければ、それを止ませることもできない。過酷な太陽を陰らすことも、台風の進路を逸らすことも、何一つその手で為すことはできない。
けれど、人間しか持っていないGot Handがある。それは想像の翼だ。その羽を羽ばたかせることを諦めなければ、翼は創造主のそれへと進化するだろう。
「いいわね……。好きよ、この表現。言葉を追う度にワクワクしてくる感じかな」
「ワクワクしてくれれば何よりだ。続きを書くために俺も絵を生成してみたんだが……」
遂に辿り着いた。白き鳥たちが銀河の下、水を湛える湖面で羽を休めている。わたしのアルビレオ、ノーザンクロス・北十字星と出逢える日も、そう遠くはないのかもしれない。
「アルビレオってbeak starって呼ばれるんだっけ?白鳥のくちばしなのね」
「ご明察。俺がアルビレオを知ったのは宮沢賢治の銀河鉄道の夜なんだよ」
アルビレオという二重星をサファイアとトパーズに喩える創造力は、賢治の真骨頂を示している気がした。
いつかイーハトーブに旅したいね、ふたりで。そんなことを語り合った、秋の初めの夜空だった。もうすぐ新月。月の光が一休みした夜空では、銀河の星々はより一層煌めくだろうから。
拙稿題名:星を見つめ、星を捕まえる。
総字数:1199字
よろしくお願い申し上げます。
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