熾火よりも強く。【藤家秋さん企画『夏の残り火 』8/25(日)23:59まで】参加記事
貼り付け記事以下、参ります。
秋さんの短歌「残り火」、引用を失礼申し上げます。
以下、拙作を参ります。
花火がしたい、線香花火が。あなたは唐突にそう言った。
「線香花火と言っても奥深いものなんだよ。火を付けた瞬間から次々と火の形が変わっていって、一時も目を離せないの。最初は牡丹。次が松葉。牡丹は花のはじめ、パチパチと火花が散るでしょう。それが丸くなっていくのが松葉。線香花火、その花の盛りよ」
丸く火の華の形に変わった花火から、ぱっと花びらが飛び散る。赤が黄色をまとって強く輝き、咲き誇る。
線香花火の姿を辿り、彼女に言葉を告げた。「君の顔、火に照らされると綺麗になるね」と言葉を添えると、「莫迦なこと言っていないで。ほら、花火の形が変わるわ。次は柳。よく見ていないと終わっちゃうわよ」と、照れて少し怒ったような顔で答えが返された。
火の花びらが、長く尾を引いてゆく。漆黒に光の線を引いて、散っては消えて。
「最後はちり菊。だったよね?火の玉が丸くなって、火の花びらがひとすじの線みたいになる」
花びらが軌跡を引いて、闇へと溶けていき。そして火玉だけになって。
ふっと音を立て、そして止むように。光も消えた。
火の消えた線香花火を片付け、消火もして。俺は彼女に声を掛ける。その細い肩にそっと手を置いて。
「……冷える前に、部屋に戻ろうか。風邪引いちゃうから」
自分の掌をその白い手に重ねて、言葉を告げた。その手にまた、白い掌が重なって、
「……そんなの、心配ないでしょ?誰かさんが居てくれるんだから-」
あっためて、くれるんでしょう?
黒い瞳が微笑みで答えを返した。
「……知らないぞ、そんな事言っちゃって。責任、持てないからな」
返された微笑みに負けずと言葉を返す。それを聞いた黒い瞳が、その笑みを一層深くした。
「ふふ。お手並み拝見しましょうか、あなたの」
返される負けず嫌いのあなたの台詞に、俺はただ苦笑いをこぼすのみ。
そんな、秋のはじまりを告げる、ある夜のできごとだった。
拙稿題名:熾火よりも強く。
総字数:779字
秋さん。御歌を敷きつつ(企画で良しとしておられる)線香花火もテーマとし綴りました。よろしくお願い申し上げます。
スボ手牡丹について解説記事を🔗いたします。
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