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仲間と共に高みを目指す技術~「人的ネットワークづくりの教科書」を読んで~

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どんな本か?

現代社会における「人的ネットワーク」の重要性を理解し、「人的ネットワーク」を構築する具体的な方法を学ぶことができます

なぜこの本を読むのか?

アフリカのことわざ「早く行きたければ、ひとりで行け、遠くに行きたければ、みんなで行け」のとおり、人が一人で成し得ることは何一つないと言っても過言ではないからです

1. リスキリングだけではダメな理由

1-1. 組合せの威力

イノベーションは、組合せによって生み出されます。
リンダ・グラットンは、著書「ワークシフト」の中で、「グローバル化が進展し、世界中の人々が結びつく時代には、イノベーションと創造性が極めて重要になるが、真のイノベーションと創造を成し遂げようと思えば、大勢の人たちの能力とノウハウ、人脈を統合することが不可欠」と述べています。
また、イノベーションの父と呼ばれるヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションは既存の知と別の既存の知を組合わせることで生まれるとしています。
つまり、組合せこそが、爆発的な価値を創造するカギと言えます。

1-2. VUCAの時代

中途半端な価値では太刀打ちできない時代に突入しています。
現代は、いわゆるVUCAの時代です。人工知能技術や情報通信技術が発達し、世界中のあらゆる知見が形式知化され、GAFAMに代表されるテック企業がその形式知を世界中に流通させています。
時代の流れがあまりにも早く、先行きも見通せないため、良いサービスもあっという間に陳腐化し、企業の寿命も短くなっています。
したがって、個人が企業にぶら下がっているだけでは生きていけない、また、企業が単独では生きていけない、そんな時代が迫っていると言えます。

1-3. 今こそネットワーキング

生存のカギは、ネットワーキングです。
人や企業が単独で成し得ることが少なくなってきているため、これまで以上に、組織や専門分野の内外を問わず、多様性を重視して手を取り合い、相乗効果により価値を協創していく必要があります。
この考えは、近年の日本企業の衰退によって証明されていると筆者は思います。例えば、(一社)日本経済調査協議会による「日本型イノベーションを起こすために 企業トップのやるべきこと」は、日本企業は連携が下手で、自らの技術を隠すため、イノベーションが生じにくくなっていると指摘しています。これは、自らの技術リソースを公にする欧米企業と対称的だと思います。

2. 自己実現スパイラル

2-1. "志"、"能力"、"人的ネットワーク"

"人的ネットワーク"は、"志"、"能力"と三位一体を成す自己実現のための手段です。
つまり、どのような素晴らしい志、能力を持っていても、人的ネットワークを疎かにしては目標は達成できません。また、人的ネットワークをどれだけ広げようと思っても、志、能力を高めないと、目標を達成できるわけがありません。"志"、"能力"、"人的ネットワーク"をバランス良く伸ばすことが、自己実現には必要です。

2-2. 自己実現スパイラルの構造

"志"、"能力"、"人的ネットワーク"は、バランスよく鍛えることで、自己実現に向けてスパイラル状に成長できます。この3つの要素は、いずれも、鍛えることにより、その成長をさらに促進するのみでなく、他の2つにも良い影響を与えるからです。

"志"は、それについて考える時間を増やし、内省を深め、それがさらに"志"の明確化に繋がります。また、"志"が見つかり、自分自身の将来のビジョンが明確になれば、必要な能力が明らかになり、能力開発に繋がります。さらに、明確な志を持つ人は、それに向かって行動する姿が、他者の期待や共感を呼び起こすため、人的ネットワークの構築につながります。

能力

"能力"の開発により、できることが増え、ステージが上がったり、活動の幅が拡がったりすることで、"志"の確信度を強めたり、方向修正したりすることができます。さらに、新たな経験を得て、能力をさらに高めることもできますし、認知が増え、人的ネットワークも拡げることができます。

人的ネットワーク


"人的ネットワーク"の構築で、明確な志を持つ人と関わったり、自分が共感する活動に参加できます。良い影響を受け、感動をすることで、自分の"志"がより明確になります。また、自分にないスキル・情報を持つ他者と関わり、能力開発のきっかけを得ることもできます。さらに、新たにつながった他者を起点に、ネットワークをさらに拡げていくこともできます。

3. ネットワークづくりは"真摯に一歩ずつ"

3-1. ネットワークを構築する5ステップ

ネットワークづくりには5つのステップがあり、それを一歩ずつ上っていくことが大事です。
優れた人的ネットワークを構築しているビジネスパーソンも、いきなりそのようなネットワークが構築できたわけではなく、意識的に人的ネットワークを拡げる活動をし、失敗をしてそこから学びを得ながら、一歩ずつネットワークを拡げてきました。
ここで、一歩ずつネットワークを拡げるにあたり、どのようなステップがあるかを理解することが大事です。本書によれば、このステップは、⓪活動を行っていない、➀活動を開始したばかりのステップ、②場の活性化に寄与するステップ、③得意分野において場を提供するステップ、④得意分野における専門家として認知されているステップ、⑤フロントランナーとして認知され周辺に勝手に人が集まりコミュニティが増殖されているステップ、の5つです。
これを念頭に、まずは、自分がどのステップにいるのかを認識し、次のステップを目指して具体的なアクションを取っていくことが必要です。例えば、これまで活動の隅っこにいるだけであった方は、ステップ➀の状態なので、場の活性化に寄与するように積極的に発言したり、幹事を引き受けたりするなど、ステップ②に上がるためのアクションを取っていく必要があるということです。また、これまで全く活動を行ってこなかった方が、いきなりステップ③に移行しようとしてもムリがあるため、一歩ずつ進めていくことが肝心です。

3-2. 人間力と発信力

ネットワークは一対一の関係が基本となるため、自発的な行動のみでなく、他発的な行動を誘因する人間的魅力を醸成すると共に、自分という人間を発信することも必要です。
ビジョン・能力・知名度が素晴らしかったとしても、1対1の関係において、相手にそのことを伝える"発信力"がなければ関係は構築できませんし、相手から"信頼できる"と思われるような、人間としての"基礎力"がなければ、その関係を維持することは難しいです。
本書では、良好な関係を維持する人間としての"基礎力"と、それを認知してもらう"発信力"を合わせて"本質機能"と呼んでいます。"志"、"能力"、"人的ネットワーク"を三位一体で向上させる自己実現スパイラルを回す際、"人的ネットワーク"をブーストするために、"本質機能"が必要という位置づけと筆者は理解しています。

基礎力

"基礎力"について、本書では詳しく述べられてはいませんでしたが、本書で紹介されているアンケートによれば、以下のような人物が、いわゆる"基礎力"の高い人と言えそうです。

  • 自己主張ばかりをせず、人の話を聞ける人

  • 相手を傷つけるようなことは言わない人

  • いつもニコニコしている人、その人がいると周りが楽しくなる相手

  • 協力的な人

発信力

"発信力"については、SNSで専門分野の発信を続けること等が大切と考えます。

まとめ

これからの時代、「如何に他者と協働して、新たな価値を創造していくか?」は、企業やビジネスパーソンにとって、避けては通れない、主要アジェンダになると言えます。そのために、明確な志を持ち、能力を開発することに加え、人的ネットワークを意識的に構築するように努めることが大事です。人間力を高め、自分の専門分野を発信しながら、ネットワークレベルを地道に一つずつ高めて行くことで、自己実現のスパイラルを駆け上がることができると考えます。

参考文献

グロービス経営大学院、「人的ネットワークづくり」の教科書、2022/4/15、東洋経済新報社


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