持てる力を尽くして、考え抜いたから生まれたすごい閃き

こんにちは。 
今回は、CASIO=カシオ計算機株式会社(以下カシオ)から発売されている耐衝撃腕時計G-SHOCKの開発のカギとなった閃きの瞬間について考えてみたいと思います。G-SHOCKは1983年の発売以降、毎年のように新モデルが発表されつづけ、カシオによると2017年までの世界出荷数が累計1億個を超え、現在は世界138カ国で販売されているそうです。

開発者の伊部菊雄さんがカシオに入社したのは1976年。アナログ時計が主流の時代で、社内でデジタル時計事業が立ち上がったばかりのころでした。入社して数年したころ、社内で人とぶつかった拍子に腕につけていた時計が落ちてバラバラに壊れてしまいました。当時、「時計は精密機器で落とすと壊れる」と言われていました。伊部さんは、それが「現実に起きている!」と床にちらばった部品に目が釘付けになったそうです。
そんなことがあったのち、伊部さんは月に1度の「新技術・新商品提案書」に「落としても壊れない丈夫な時計」とだけ書いて提出しました。その提案書が通ってからが大変だったといいます。
当初は、「厚いゴムで繊細な部品の周囲をカバーすれば、大丈夫だろう」と考えていましたが、ゴムでカバーした部品を3階の窓から落としてみると、中の部品は壊れてしまいます。ゴムの厚みを増しても壊れ、結局ソフトボール大くらいまでゴムを厚くしなければ部品を保護できないことが分かります。

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これでは腕時計はできない、と伊部さんは違う方向性を考えます。外からの衝撃が時計の心臓部にダイレクトに伝わらないように、段階的に衝撃を吸収する仕組みを考案しました。外側のケースカバー、内側の金属ケース、ゴムのガードリング、メタルのガードリング、保護ゴムという5段階で次々に衝撃を吸収する仕組みです。
ところが、試作品を3階から落としてみると、これらの部品のうち1つだけが壊れてしまいます。その部品を強くすると今度は別の部品が1つ壊れます。それぞれの部品の強度をいくらあげても、どれか1つの部品が壊れるということの繰り返しでした。のちに伊部さんは「部品同士で強度の一番弱いものが壊れていたのだろう」と分析しています。これでは永遠に壊れない時計は実現できません。伊部さんは行き詰ってしまいます。
発売時期も決まっていましたが、じつは伊部さんは実験の経過について社内で報告をしていませんでした。もう会社を辞めるしかないと覚悟を決めて、「あと1週間、とことん考えてだめだったら終わりにしよう」と期限を区切って、寝ても覚めても考え続けたといいます。それでもアイデアが浮かばないまま、最後の日曜日を迎えた伊部さんは、お昼に会社の外に出て公園のベンチにぼんやり座っていました。
そこで伊部さんは、ボールあそび(まりつき)をしている子どもを見かけ、「子どもは悩みがなくていいなぁ」と、その様子を見ていました。そのとき、「突然、ボールの中に時計が浮いている絵が頭の中に浮かんだ」そうです。「時計の心臓部を浮いている状態にすれば、落としても部品に衝撃が伝わらず、壊れない。浮いている状態を作りだせばいいんだ!」という画期的なアイデアを閃いた瞬間です。

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でも、腕時計の中で空中に部品を浮かせることはできません。伊部さんは、衝撃が伝わらない、浮いたような状態を、点で支えるという方法で実現しました。面で接触していると衝撃が面で伝わるのに対して、点で接触していると伝わる衝撃が小さくなり、いわば浮いているような状態になるのです。
こうして、5段階で衝撃を吸収したのち、最後に点接触で心臓部分が浮いているようにした試作品は、3階から落としてもまったく壊れませんでした。こうしてG-SHOCKが生み出されたのです。
伊部さんのこの閃きをET理論の式にあてはめると、このようになります。

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弾んでいるゴムボールを見ていて頭の中に「ボールの中に時計が浮いている絵」が浮かんだとき、伊部さんは、ほぼ完成形の「壊れない時計」の構造を直観的に認識していたのです。ゴムボールは、中のものを守るためのものではありません(中には空気しか入っていません)。にもかかわらず、そこから一気に自分がつくりたいと思っている時計の構造を閃いたところが、伊部さんの閃きのスゴイところだと思います。
伊部さんは、当初ゴムで衝撃を吸収する方法を試して挫折していました。段階的に衝撃を吸収する方法でも行き詰っていました。衝撃を吸収する方法ではどうにもならない、と追い詰められていたからこそ、ゴムボールを見て、「空中に浮かす=衝撃を伝えない方法」があることを発見したのではないかと思います。

「ぼくらの履歴書」というウェブ記事の中で、「なぜ、最後の最後でアイデアが浮かんだのだと思いますか?」という質問に、伊部さんは次のように答えています。

持てる力を尽くして、考え抜いたからだと思います。考え続けることは、辛いですし、徒労に終わってしまうことも少なくありません。けれど、その蓄積は決してムダではない。ふとした瞬間に、アイデアにつながることがあるんです。「絶対に実現したい」と思うことに関しては、「極限まで考え抜けば、解決策が出る場合がある」と、身にしみて感じられましたよ。

 すごい閃きなどの独創的、革新的な発想力は天才肌など、センスが必要と思われることもありますが、一見報われないような努力の積み重ねと強い思いによって生み出されるものでもあります。だからこそ、発想力を鍛える意味もあるのではないでしょうか。


この記事は、以下のサイト、ウェブ記事を参考にしました。




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創造理論「等価変換理論(Equivalent Transformation Theory =ET理論)」による子ども向けプログラムを開発・実施。創造性は生きる力につながります。ここではET理論の基礎となる考え方や、その視点から考えたことを書いていきます。等価変換創造学会準会員。